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銃弾を浴びた元WBAスーパーライト級暫定王者が故郷でドロー

林壮一ノンフィクションライター
(C) Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 元WBAスーパーライト級暫定王者、ホセ・ベナビデス・ジュニア(29)が37カ月ぶりのリングに上がった。

 5歳下の実弟、デビッドがメインイベント、自身がセミファイナルで、故郷フィニックスのリングに登場。2016年8月23日に両足を撃たれ、ボクサー生命の危機に晒されたホセ・ベナビデス・ジュニアを地元ファンは温かく迎えた。

(C) Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
(C) Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 しかし、試合が始まると、誰もが元WBAスーパーライト級暫定王者の変わり果てた姿を目の当たりにする。

 かつてのホセ・ベナビデス・ジュニアは、思い切りよく相手の懐に飛び込み、ボディブローに光るものを見せた。ステップのスピード、そして連打の回転も評価を得ていた。

(C) Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
(C) Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 とはいえ、この日のベナビデスは、アルゼンチンからやって来たエマニュエル・トーレスの無数のパンチを浴び、劣勢に立たされる。

 2018年10月13日にWBOウェルター級タイトルに挑み、テレンス・クロフォードに最終ラウンドTKO負けした一戦でも、元暫定王者らしいボディワークやパワーを見せたが、この日はトーレスの正確さの方が上回っていた。

(C) Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
(C) Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 結局、95-95が2名。96-94でベナビデス勝利と採点したジャッジもいたが、ホームタウン・デシジョンと呼ばれても仕方のない内容であった。

 ベナビデスは27勝(18KO)1敗1分け。トーレスは17勝(5KO)3敗1分けとなった。

 試合後、ベナビデスは憤懣やるかたないといった表情で捲し立てた。

 「何でドローなんだ。全てのラウンドで、俺のパンチの方がヒットしていた。ヤツは逃げ回っていたし、ホールディングを繰り返した。ジャッジには納得いかない。勝ったのは俺だ。どうしろっていうんだよ!」

 そんな元暫定王者の背には、ブーイングが浴びせられた。

(C) Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
(C) Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 一方のトーレスも言った。

 「観客のブーイングが示すように、勝者はこの私です。敵地から来た選手にドローと採点した意味を理解してほしいですな。是非、リマッチで決着をつけたい」

 トーレスが希望するように、再戦となるだろうか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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