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YouTuberをメインイベンターとしたSHOWTIMEのPPV

林壮一ノンフィクションライター
(C)Amanda Westcott/SHOWTIME

 8月最後の日曜日にオハイオ州クリーブランドで催されたボクシング興行を、SHOWTIMEがPPVで放送した。メインイベントはYouTuber対元UFCの世界王者。両者には200万ドルのファイトマネーが保証された。

 前座では好カードと呼んで良いファイトが展開されたが、メインイベントの8回戦は、見るべきものの無い一戦だった。

 ただ、それは純粋にボクシングとして見詰めた場合の見解であり、YouTube文化としては違うようだ。

(C)Amanda Westcott/SHOWTIME
(C)Amanda Westcott/SHOWTIME

 このYouTuber、ジェイク・ポールは元NBA選手や元MMA選手とボクシングルールで戦うことが好きである。それでファンを獲得しSHOWTIMEの賛同も得、ビジネスとして成立させている現実がある。

(C)Amanda Westcott/SHOWTIME
(C)Amanda Westcott/SHOWTIME

 SHOWTIMEスポーツ部門のボスであるステファン・エスピノザもボクシングの歴史に対して詫びるつもりはなく、「スポーツの進化に興味を持ち、中継することが仕事だ」と述べている。

(C)Amanda Westcott/SHOWTIME
(C)Amanda Westcott/SHOWTIME

 この日、勝者となったポールは「メディアもファンも俺を嫌う人々も、好奇の目を注いでいるじゃないか。自分が繰り返す過激な発言が、俺の存在をより大きくしているんだ」とコメントした。

クリーブランドでプロ生活をスタートさせたレブロン
クリーブランドでプロ生活をスタートさせたレブロン写真:ロイター/アフロ

 そして試合後、NBA唯一無二のスーパースターである"KING"レブロン・ジェームズが「クリーブランドが盛り上がったな! 帰省しておけばよかったよ」とSNSに書き込んだことが、同興行の価値を上げた。

UFCチャンピオンだったベウフォート
UFCチャンピオンだったベウフォート写真:ロイター/アフロ

 9月11日には別会社である「Triller」がイベンダー・ホリフィールドvs.ヴィトー・ベウフォート戦をPPVで放送。初回1分48秒で44歳の元UFCファイターが、58歳の元統一ヘビー級王者を沈めた。

 試合直後から「Triller」社は、ベウフォートに「ファイトマネー2500万ドルで、ジェイク・ポールと戦わないか?」と両者の対戦を煽っている。

 ベウフォートは、直ぐにでもやりたいと応じ、この種のイベントが好きなファンも少なからず盛り上がりを見せる。

写真:ロイター/アフロ

 しかし、である。

 マイク・タイソンvs.イベンダー・ホリフィールド第1戦、第2戦、ジョニー・タピアvs.ポーリー・アヤラ第1戦、第2戦、フロイド・メイウェザー・ジュニアvs.サウル・カネロ・アルバレス、マニー・パッキャオvs.シェーン・モズリーといった後世に残るボクシング中継をしてきたSHOWTIMEは、やはりボクシングの美しさや芸術性を伝えてほしい、と私は思うのだ。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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