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大学1年生になった36歳の元NBAベスト・シックスマン

林壮一ノンフィクションライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 NBAで16シーズンプレーしたJ・R・スミスが、ノースキャロライナA&T大学に入学し、36歳の新入生として学び始めた。英語の授業で文章を読み込み、家政学のクラスでは栄養学を履修している。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 1985年9月9日生まれのスミスは、ニュージャージー州の出身だ。2004年のドラフト1巡目18位で、ニューオーリンズ・ホーネッツにコールされNBA入り。高卒ルーキーとしてキャリアを積み、デンバー・ナゲッツ、中国のプロリーグ、ニューヨーク・ニックス、クリーブランド・キャバリアーズ、ロスアンジェルス・レイカーズと渡り歩いた。

写真:ロイター/アフロ

 その間、2016年、2020年と"KING"レブロン・ジェームズのチームメイトとして2度NBA王者となっている。2013年にはベスト・シックスマンにも選出された。

 そんなスミスが言う。

 「昔は学校が嫌いだった。これは俺の挑戦なんだけれど、大学生になって1秒で落ち込んだよ。まぁ、身を入れて、新たな環境に順応できるようにやらなきゃね」

写真:ロイター/アフロ

 「失望してばかりだ」とスミスはぼやくが、16年に及ぶNBAキャリアで、9千万ドル以上を稼いだとされるかつてのスター選手が、自身よりも20歳近く若い世代に交じってフレッシュマンとして学ぶ姿に、心から拍手を送りたい。

写真:ロイター/アフロ

 米国の大学では、「子育てが終了して時間ができたから」とか「今の環境を変えたい」等の理由で、教授より年配の生徒が存することも珍しくない。そこは教育者も心得ており、「この議題は母親の立場で述べてもらいましょう」「こういうケースでは、社会人経験のある人の視点が重要だね」などと、発言を促す。

 スミスと接する教師陣、クラスメイトにとっても大学内で稀有な体験ができることは間違いない。

写真:ロイター/アフロ

 「大学で過ごす時間をゴルフに費やせれば、どれだけ楽しいか」と、スミスは苦笑するが、一流アスリートである彼が、大学で何を掴むかに期待したい。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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