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「必ず世界を獲る」と太鼓判を押される重岡銀次朗、全勝対決で2回KO勝ち

林壮一ノンフィクションライター
6戦全勝5KOと、勝ち星、KO数を増やした銀次朗(右) 撮影:山口裕朗

 7月14日、5戦全勝(4KO)だったWBOアジアパシフィックミニマム級チャンピオン、重岡銀次朗(21)が、6戦全勝(3KO)の川満俊輝(25)を2ラウンドでKOして、2度目の防衛に成功した。

 コロナ禍で19ヵ月ぶりのリングとなった銀次朗だが、陣営は後楽園ホールの控室に入る前から、圧勝を予想していた。町田主計(まちだちから)トレーナーは言った。

 「銀次朗は毎回、9キロほど減量します。これまで、どちらかといえば、減量が上手くなかった。体重を落とす為のミット打ちや、半入浴をしてリミットを下回っていました。でも、今回はトレーニングを重ねながら、きちんと落とせた。これもキャリアでしょうね。6戦目にして、最もいいコンディションで試合を迎えました」

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 試合前、銀次朗は語った。

 「格の違いを見せ付けるつもりです。ボディへのロングアッパーやサイドの動きを取り入れ、攻撃のバリエーションを増やしてきました。リングに上がるのは久しぶりですが、成長した姿を感じてもらえたら、と思っています。自分は世界を獲れる選手だということをアピールしたいです」

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 ファーストラウンドから銀次朗は練習通りにボディブローを見舞い、ペースを掴む。冷静に相手を観察しながら主導権を握った。

 町田の回想。

 「1分くらいで相手との力量差を感じました。ジャブが効果的でしたし、上下に打ち分けられていた。足だけ止めなければ、おのずとKOシーンが訪れるぞと声を掛けました」

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 2ラウンド中盤、銀次朗の右フックがクリーンヒットし、挑戦者が沈む。起き上がった川満を窺いながら、更に左フック、右フックを浴びせる。ダメージを考慮したレフェリーがすかさず試合を止めた。TKOタイムは2分5秒。

 銀次朗は振り返る。

 「練習したことが出せましたが、倒すまでは余裕が無かったんです。最初のダウンは狙ったパンチじゃなく、自然に出ました。右フックで倒すイメージは持っていなかったんですよ。コーナーから兄貴(日本ライトフライ級ユース王者の重岡優大)の『右フックが当たるぞ!』という言葉が聞こえたので、2発目は意識しました。

 このラウンドで仕留めるぞ、とは思っていましたが、まだ時間があったので焦る必要はないな、パンチも当たるな、と考えながら戦っていました。2発目の右フックは、かなり手応えがありましたね」

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 「肩の力を抜いて、流れの中から体が反応したパンチで倒せたのが良かったです。本人のモチベーションはてっぺんに向かっていますので、次が世界タイトルマッチとなればいいですね」(町田トレーナー)

 「挑戦者は全勝の日本人選手でしたから、実力を示せたんじゃないかと思います。今まで、外人選手ばかりと試合をしてきましたから『咬ませ犬じゃないのか』なんて囁かれたこともありました。これで認めてもらえるかな」(銀次朗)

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 快勝の翌日、銀次朗は今後について話した。 

 「次の試合で世界タイトル挑戦が決まればいいな、と思っています。もっともっと進化できる気がするんですよ。自分の理想である<もらわないで打ち合ってKOする形>に近付いている自負があります。

 今回、自分のボクシングを掴みかけた感があります。もっと磨きをかけたい、更に強くなった姿を見せたいです。WBA、WBC、IBF、WBO、どのミニマム級世界王者と戦っても、勝つ自信はあります」

 期待の星、重岡銀次朗。是非一度、生でその戦い振りをご覧ください。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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