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NBA5位からの下剋上、キーワードは「Believe」

林壮一ノンフィクションライター
東地区ファイナル第1戦、両エース同士のマッチアップ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 レギュラーシーズン東地区5位でPlayoffに進出したホークスは、同4位だったニューヨーク・ニックスを4勝1敗で下し、さらに1位のフィラデルフィア・セブンティシクサーズに最終戦で競り勝って、東地区ファイナルに進んだ。

東地区セミファイナルではケガに苦しみながらファイトしたエンビードとヤング
東地区セミファイナルではケガに苦しみながらファイトしたエンビードとヤング写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 シクサーズのエースであるジョエル・エンビードは3月に左膝、Playoffに入ってから右膝を痛めた。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 一方、ホークスの大黒柱でポイントガードのトレイ・ヤングも、シクザーズとの第3戦で右肩を負傷。ベンチに下がった際には、アイシングを繰り返しながらのプレーで、チームを牽引した。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 そして現地時間23日に敵地で行われた東地区のファイナル第1戦、ホークスは116-113で、ミルウォーキー・バックスに勝利した。

 1Qで25-28、ハーフタイムで54-59とビハインドを負いながら、4Qスタート時に88-85とリード。最終Qに逆転され、一時は7ポイントの差を付けられたホークスだったが、残り29.8秒で試合をひっくり返し、逃げ切る勝負強さを見せた。

 ヤングは41分5秒のプレーで、圧巻の48得点。アシストも11をマークし、ダブル・ダブルを達成。リバウンドも7とチームの顔らしい活躍ぶりだった。48ゴールは、もちろん両チームを通じて最多である。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 このゲームで2番目に多い得点である34を挙げたバックスのヤニス・アデトクンボは41分1秒コートに立ち、9アシスト、12リバウンドと、こちらもダブル・ダブルを記録。

 両エースがコートにいるのといないのでは、チームのリズムがまるで違う。東地区ファイナルは、彼らの出来が勝敗を分けそうだ。

 シクサーズとの戦いでは、満身創痍の感があったヤングだが、右肩からテーピングが外れた。ベンチでは相変わらず入念にアイシングしているが、コンディションは上向きに見える。今シーズンのオールスターでMVPを獲得したアデトクンボも、ブルックリン・ネッツに地区セミファイナルで最終戦まで苦しめられた際の疲労した表情が消えた。

 非常に見応えのある地区ファイナルとなりそうだ。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 レギュラーシーズン5位から勝ち上がって来たホークスは、チーム全員が胸に大きく「Believe」なる文字が入ったシャツを身に纏っている。ホームゲームでは観客全員に、そのTシャツを配った。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 「土地、この試合、この瞬間。どれも決して楽じゃない。苦難を乗り越えて誕生したアトランタの歴史ーー時にハッスルし、時に歯ぎしりし、粘り強く仕事を積み重ねながら、どん底から這い上がって来た。そこから頂点を目指す。我々は地を信じ、己を信じ、仲間を信じる。そして闘う!」

 そんな合言葉で快進撃を続ける姿には、胸を打たれる。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 Playoffに入ってから、ティップオフ前に何度もネイト・マクミラン監督がホワイトボードに「Believe First」と記すシーンが映し出されている。

 東地区ファイナルで先手を取った直後、ヤングも「自分自身、チームメイト、仲間一人一人、ファンを信じているからこその勝利だ。これからも、『信じること』を第一に勝ち上がってみせる」と語った。

 「Believe」という言葉の意味を、今一度、熟考する機会を与えられたように思う。ホークスは今後、どのような闘いを見せるのか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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