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アルゼンチン人コーチが語る「日本代表vs.セルビア」

林壮一ノンフィクションライター
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 実兄のピチは、あのディエゴ・マラドーナと共にワールドユース東京大会(1979年)で世界一となった右ウイング。息子は、チェンマイ・ユナイテッド所属のエスクデロ競飛王。

 自身は、元アルゼンチンユース代表&ビーチサッカーアルゼンチン代表であるセルヒオ・エスクデロ。

 一昨年の末から、川越市のフットサル場で自らスクールを始め、今日、埼玉県のジュニアユース、トリコロールFCのコーチとして指揮を執る彼が、セルビアを1-0で下した11日の日本代表について語った。

撮影:著者
撮影:著者

 「このところ、ワールドカップのアジア2次予選で圧勝していたサムライブルーですが、セルビアのような強い国を相手にすると、粗も見えますね。1-0で勝利したことは非常に喜ばしいのですが、あのサッカーでワールドカップ、ベスト8以上を狙うのは厳しいです」

写真:YUTAKA/アフロスポーツ

 「DF陣は良かったですね。久しぶりに招集された谷口彰悟は、川崎フロンターレを常勝軍団としている柱だけあって、落ち着いていました。キャプテンの長友佑都、CBでコンビを組んだ植田直通、右サイドバック室屋成との連係も問題なかったです」

写真:ロイター/アフロ

 「でも、前の選手にアイデアが見られない。チャンスメイカーとして右サイドからいいボールを折り返す伊東純也は、今の代表に欠かせません。ゴールも決めましたし、高く評価できます。

 でも、もう少し前の選手が工夫しなければ、得点シーンは生まれないと思いますね。本人が一番感じているでしょうが、浅野拓磨がフリーで外してしまった場面は目を覆いたくなりました」

写真:YUTAKA/アフロスポーツ

 「森保一監督が、具体的にどんな指導をしているのかは分からないのですが、FWはエゴイストでなければ務まりません。大迫勇也が離脱したことが響いたのでしょうが、攻撃陣に怖さが無かった。『何が何でもゴールしてやる!』という気魄も見えなかった。

 昔の本田圭佑なんて、『俺によこせ!』『FKは絶対に譲らない。俺が蹴るんだ!』というスピリットを常に発していたじゃないですか。日本人としては珍しいタイプだけれど、ワールドカップで上を目指すなら、本田のような選手がチームには必要不可欠ですよ」

写真:アフロスポーツ

 「今の代表選手たちは、"良い子"過ぎます。もっと戦うことの意味を突き詰めてほしい。原口元気は、自分がボールを持ったらドリブルで仕掛け、3人くらい躱してシュートを打つスタイルを貫いて階段を上がっていきました。セルビア戦の彼からは、その良さが見えませんでした。橋本拳人もタジキスタン戦のような激しさが消えていました。

 もっともっとワールドカップ本大会で歴史を作ることを意識したチーム作りが求められますね。11日の代表チームなら、川崎フロンターレの方が強いです。しっかり課題を克服して、次に向かってほしい。僕は本当に日本代表に勝ってもらいたいんです」

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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