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世界ヘビー級チャンプが語った「フロイド・メイウェザー・ジュニアvs.ローガン・ポール」

林壮一ノンフィクションライター
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 現地時間6日に行われたフロイド・メイウェザー・ジュニア(44)と、YouTuber、ローガン・ポール(26)のエキシビションマッチは、お寒い内容だった。試合直後からSNSで「PPVで払ったカネを返せ」「メイウェザーの負けだ」「酷いショーだった」「もうSHOWTIMEは解約する」など、罵詈雑言が飛び交っている。

 メイウェザーが圧倒するように思っていたが、彼も44歳。日本のキックボクサーを相手にした時よりも衰えを見せた。

 さて、元WBC、WBA、ヘビー級チャンピオンであるティム・ウィザスプーンに、同エキシビションの感想を語ってもらった。

ディフェンスに定評のあったティムは、ダメージ無く引退できた。  撮影:著者
ディフェンスに定評のあったティムは、ダメージ無く引退できた。  撮影:著者

 ティムは吐き捨てた。

 「ローガン・ポールという男は、ボクサーとしては駆け出しだよな。世界のトップ15に入れるような実力も無いのに、あんな大舞台が用意されてSHOWTIMEのPPVに出られてしまう。カネもミリオン単位で稼げるなんて、まったくどうかしているぜ。

 ボクシング界にとってはマイナスなイベントだよ。真面目に努力して、キャリアを積んでいる選手たちが可哀相だ」

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 ティムと私の付き合いは四半世紀になる。彼は世界ヘビー級王座に2度就きながらも、プロモーターとの奴隷契約に泣き、絶望と共にリングに上がった時期がある。※ティム・ウィザスプーンについて詳しく知りたい方は、拙著『マイノリティーの拳』(光文社電子書籍)をお読みください。

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20210205-00220977/

 そんな男の言葉は重かった。

 「現役選手じゃなく、YouTuberを優遇したテレビ屋たちにも反吐が出る。単なる見せ物であって、リアル・ファイトじゃない。本物のボクサーがメインイベンターとなるまでに、更には世界タイトルを獲得してPPVで放送してもらえるようになるまでに、一体どれだけの苦労と時間を要すると思っているんだ?」

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 「まぁ、ニーズがあったんだろうし、購入した人に文句を言うつもりはないけれど、YouTuberとプロボクサーを混同してしまうところが、俺には信じられない。YouTuberでも本気でボクシングをやるなら、きちんと階段を上がるべき。ポール兄弟に、そんないくじは無いだろうがな。

 ボクサーとして真っ当な道を進んでいたら、あの兄弟は世界タイトルに辿り着けやしないさ」

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 「フロイドは44歳ながら、しっかりトレーニングしたようだな。俺がその年齢の頃は現役だったよ(笑)。でも、ヤツはもう引退した選手だ。ファンもフロイド・メイウェザー・ジュニアが現役じゃないってことを、きちんと理解する必要がある。あくまでもエンターテイメントととして、リングに上がっているんだから」

6/11のイベントのポスター  ティム・ウィザスプーン提供
6/11のイベントのポスター  ティム・ウィザスプーン提供

 「そういう俺も、今週金曜日(現地時間11日)にレスラーとエキシビションをやるんだ。まぁ俺も64歳だし、本気で殴ったりはしないさ。エキシビションとして、ファンを楽しませるつもりだよ。エキシビションはエキシビションだからな」

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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