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「必ず世界チャンピオンになる」と太鼓判を押された男に用意されたプロ6戦目のリング

林壮一ノンフィクションライター
撮影:著者

 目下、5戦全勝(4KO)でWBOアジアパシフィックミニマム級のベルトを巻く重岡銀次朗(21)が、今月23日に同タイトル2度目の防衛戦を迎える。チャレンジャーは、6戦全勝(3KO)の川満俊輝(25)。

 銀次朗がプロ転向後に日本人選手と戦うのは、初めてである。

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 そして、銀次朗がリングに上がるのは、5回KOで同タイトル初防衛を果たした2019年12月31日以来だ。

 所属するワタナベジム、渡辺均会長が「間違いなく世界を獲る逸材」と太鼓判を押す銀次朗だが、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、なかなか試合が決まらなかった。

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20190418-00122579/

 「1年半もブランクを作ってしまって、メンタルがやられました。試合が決まりかけても、すぐに流れてしまう。先が無い。このままボクシングが出来なくなってしまうのかな…とモチベーションが落ちましたね」 

 気持ちを折らないように保てたのは、同じワタナベジムに所属する兄、優大の存在だった。

 「兄と話していると『試合が無くて辛いのは、自分だけじゃない』『一人じゃないな』と思うことができました。いつもではありませんが、一緒にロードワークをすることもあります。やはり、同じ夢を持つ兄が傍にいるのは大きいです。ライバルでもありますし」

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 「気持ちが沈んだ日は、世界タイトルを獲ることをイメージしたり、youtubeで世界の有名選手の試合を見て、心を燃やしました。井上尚弥選手の素晴らしいファイトなんかを目にすると、体が熱くなりますね。

 今回の試合が決まった時は、『ついにか!』と本当に嬉しかったです。1年半の間に自分の動きが落ちてしまうということもなかったので、ここまで持ち堪えて良かったという気持ちです」

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 この1年半の間、ロードワークでは長距離に加え、坂道でのダッシュを取り入れた。銀次朗は、スタミナが格段に増したと自信たっぷりに語る。

 「坂道を3分ダッシュして1分ジョギング、というメニューを連日8本くらいやって来ました。努力の成果を感じています。

 23日の防衛戦は<相手のパンチをもらわない>ことをテーマとしています。打ち終わりを気を付けたいですね」 

撮影:著者
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 「川満俊輝とは以前、三迫ジムでスパーリングをやったことがあります。4ラウンドずつ2日やったかな。

 どんどん前に出てきますが、粗いボクシングだなという印象です。向こうも無敗、3連続KO中で勢いがある、今年の1月に試合をしたのでブランクが無い、だから重岡は危ないんじゃないか、なんて言う人もいるようですが、自分にとっては勝って当たり前の試合です。打ち合おうが離れようが、どんな場面でも格の違いを見せ付けてやるつもりです。前半にKOしたいですね」

 期待の星、重岡銀次朗、是非一度、生でその戦い振りをご覧ください。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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