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元WBCスーパーウェルター級王者が、父を亡くしてから初のリングに上がる

林壮一ノンフィクションライター
(写真:Shutterstock/アフロ)

 2018年12月22日、ジャーメル・チャーロを判定で下してWBCスーパーウェルター級タイトルを獲得したトニー・ハリソン(30)。1年後のダイレクトリマッチでは、第11ラウンドKO負けで王座から転落した。

 Photo:Leo Wilson/PBC 2019年12月21日、ハリソンは第11ラウンド2分8秒でKO負けした
Photo:Leo Wilson/PBC 2019年12月21日、ハリソンは第11ラウンド2分8秒でKO負けした

 そのハリソンが1年4カ月ぶりのリングに上がる。明日、ブライアント・ペレーラ(32)戦を迎える。

 16カ月間のブランクを作ったのは、その間にトレーナーでもあった父が他界したからだ。

 トレーニング・キャンプ中、ハリソンは言った。

 「親父はいい仕事をしたと思うよ。俺をファイターとして色んなスタイルに適応できるよう育ててくれた。どんな状況に置かれても適応可能な選手になれた」

 今回の試合は、父無しで迎える初めてのリングとなる。

 Photo:Leo Wilson/PBC
Photo:Leo Wilson/PBC

 「父は俺の年齢や体の調子を考慮したうえで、最高の戦い方を考えてくれた。もう若い選手じゃないだろう。いかに頭を使って戦うかが求められる。

 今回、若く、素晴らしいパートナーたちとのスパーリングを重ねた。彼らが追い込んでくれたお陰で、考えて戦うことを身に付けた。メンタル面も万全に仕上がったよ。ブランクの影響があるとか、自分が衰えたとはまったく感じない。キャンプで2~3ラウンド動いたら、手応えを感じた」

 ブライアント・ペレーラは、トリッキーなサウスポーだ。ウエルター級でリングに上がっていたが、この試合に向け、スーパーウェルターに増量した。そして、何より注目したいのは、あのロイ・ジョーンズ・ジュニアの教えを受けている点だ。

かつてのパウンド・フォー・パウンド、ロイ・ジョーンズ・ジュニア
かつてのパウンド・フォー・パウンド、ロイ・ジョーンズ・ジュニア写真:Shutterstock/アフロ

 「サウスポーであるということ以外に、ペレーラについては多くを知らない。ただ、

KOで勝たねばとは思う。勝利こそが自分にとって、最も大きなものだ。新たなトレーナーと共に、勝利を挙げねばならない」

 元王者は敗戦から何を学んだか。哀しみを乗り越え、どんなファイトを見せるか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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