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アルゼンチン人コーチが語る「サムライブルー2試合から感じたこと」

林壮一ノンフィクションライター
(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 実兄のピチは、あのディエゴ・マラドーナと共にワールドユース東京大会(1979年)で世界一となった右ウイング。息子は、栃木SC所属のエスクデロ競飛王。

 自身は、元アルゼンチンユース代表&ビーチサッカーアルゼンチン代表であるセルヒオ・エスクデロ。

 一昨年の末から、川越市のフットサル場で自らスクールを始め、今日、埼玉県のジュニアユース、トリコロールFCのコーチとして指揮を振るう彼が、25日の日本代表vs.韓国代表戦、26日のU24日本代表vs.アルゼンチン代表戦について語った。

撮影:著者
撮影:著者

 A代表は3-0と、とてもいい内容で勝利しましたね。森保監督になってから、ベストゲームと言っていいんじゃないかな。

 ただ、日本が良かった反面、韓国は酷過ぎました。急に決まった試合で、ベストメンバーではなかったですよね。ソン・フンミンもいなかったし、いつもの怖さがありませんでした。

 そんななかで、センターバックの吉田麻也と冨安健洋、ボランチの遠藤航と守田英正が素晴らしいプレーを見せました。攻撃陣も伊東純也、大迫勇也と良く戦えていました。

 特に僕の目を惹いたのが、遠藤航です。ブンデスリーガで活躍しているだけあって、物凄く伸びています。今や日本代表のキーマンでしょう。

写真:西村尚己/アフロスポーツ

 翌日のU24代表のアルゼンチン戦は、スコア(0-1)以上の差がありました。アルゼンチンは時差ボケの影響があったので、調整試合といった感じでしたが、日本に決定的な仕事をさせませんでした。

 背番号9のアドルフォ・ガイチが本調子だったら、あの日本代表では止められませんよ。足元も爆発力も体の強さもある。そして身長187センチと、高さもある。これからが楽しみなストライカーです。

 自分の国だからということを差し引いても、アルゼンチンは東京五輪の優勝候補でしょうね。

写真:西村尚己/アフロスポーツ

 U24日本代表は、開催国としていい結果を出してほしいです。心からそう願います。でも、26日のゲームを見る限り、難しいと思います。

 前々から感じていますが、日本人は久保建英を特別視し過ぎです。和製メッシなんていう見出しを付ければ新聞が売れて、視聴率も稼げると判断するのでしょうが、そんなレベルの選手じゃない。日本メディアの軽薄さを嫌でも目にしますね。

 アルゼンチンみたいな強豪と対戦したら、並み以下であることが今回ハッキリしたでしょう。アルゼンチン人から見たら、特に印象に残らない選手です。ボールを持っても、怖さが全くありません。

 まだ19歳ですから、あまり飛び級させずに2歳上くらいの代表チームでキャリアを積ませ、結果を出してから引き上げるべきですよ。今、スペインで大活躍しているのなら別ですが……。日本人のなかでは確かに上手い方でしょうが、無理に造られたスターという感が拭えません。

写真:西村尚己/アフロスポーツ

 フリーキックも久保が蹴っていましたが、枠に飛ばすことさえ出来ない。他に「俺が蹴る!」って言う選手がいないことも問題ですね。

 日本のサッカーファンは、今こそ冷静に遠藤航と久保建英を比較すべきです。遠藤はU16から一歩ずつ上ってA代表に上り詰めました。ロシアワールドカップでもメンバーに選ばれたのに、出場できずに悔しい思いをした。それを糧として今があります。シュトゥットガルトで不動のレギュラーとなり、ブンデスリーガをも代表する選手です。

 久保はリーガエスパニョールで、どんな位置に立っていますか? 日本の至宝と呼ばれながら一体何を見せたんですか? 日本人は、メディアの謳い文句に踊らされずに現実を見なければいけない。アルゼンチンで久保が話題になることは無いんです。

 今夜もU24はアルゼンチン戦がありますね。どんな試合になるでしょうか。僕は日本で生活しているから、サムライブルーには本当に頑張ってもらいたいんです!

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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