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WBAライト級タイトル挑戦者決定戦

林壮一ノンフィクションライター
Photo: Amanda Westcott/SHOWTIME

 先週末に行われたWBAライト級挑戦者決定戦は、メキシカンのブルファイター、イサック・クルズ・ゴンザレスが、アルゼンチン人のホセ・マティアス・ロメロを3-0の判定で下した。

 21勝(15 KO)1敗1分けとなった22歳のゴンザレスにとって、12ラウンドを戦うのはプロデビュー以来初めてのことであった。

Photo: Amanda Westcott/SHOWTIME
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 母国には「メキシコのタイソン」と称するメディアもあるように、身長163センチのゴンザレスは、ライト級においてかなり小柄な選手である。頭を振って相手に接近し、左右のフックを叩きつけて行くスタイルは、マイク・タイソンと似ていなくもない。

 だが、元統一ヘビー級チャンピオンほどコンビネーションにバリエーションがない。タイソンは「0.4秒間に6発のパンチを出せ」と指導され、スピーディーなコンビネーションを習得したが、ゴンザレスはとても、その域には達していない。

 メキシコやアルゼンチンといったスペイン語圏の選手たちは、ファイトを「ペレア」と呼ぶ。下がることを好まず、打ち合って勝つボクシングを身上とするファイターが多い。

 この日の両者もそうであった。ゴンザレスはフルラウンド、前身する姿勢を崩さなかった。

Photo: Amanda Westcott/SHOWTIME
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 身長で10センチ、リーチで18センチ優るロメロは、ジャブで試合をコントロールしようとした。282発のジャブを放ち、89をヒット。しかし、ゴンザレスのパワーがやや上回った。

 短躯のメキシカンは459発のパワーパンチを繰り出し、そのうちの145がアルヘンティ―ナを捕らえた。145分の91はボディーショットで、少なからずローブローも見せた。第6ラウンドには減点を告げられている。

Photo: Amanda Westcott/SHOWTIME
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 結局、118-109、114-113、115-112の3-0でゴンザレスがWBAライト級の指名挑戦権を得た。

 試合後、勝者は言った。

 「今日のパフォーマンスは良くなかった。でも、勝利してトップコンテンダーとなれたことは素直に嬉しい。ジャッジがどんな印象を持ったかは分からないが、自分は積極性でアピール出来たように思う。

 ロメロは打ち合いを避けていたね。彼のクリンチには飽き飽きさせられた。レフェリーは注意すべきだったよ。まぁ、勝者としてメキシコに帰れることが喜びだね」

Photo: Amanda Westcott/SHOWTIME
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 24戦全勝8KOでこの日を迎え、初黒星を喫したロメロは述べた。

 「納得のいかない判定ですね。自分はドローだったと感じました。出来ることはやったし、今日の戦いぶりには満足しています。彼は突進型ですが、私は距離を取って捌いたでしょう。今日の為に、十分に準備したのに……」

Photo: Amanda Westcott/SHOWTIME
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 ゴンザレスの次戦の相手は誰か? ワシル・ロマチェンコを下してIBF/WBAスーパー/WBO/WBCフランチャイズ統一ライト級チャンピオンとなったテオフィモ・ロペス・ジュニア(23)か? あるいはWBA正規タイトルを持つジャーボンテイ・デービスか? 

 いずれにしてもチャンピオンが有利だが、ペレアに向けて己を追い込め!

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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