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再起ロードを歩むヘビーウェイト、197センチvs.201センチ

林壮一ノンフィクションライター
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 2019年9月14日にタイソン・フューリーと対戦し、0-3の判定負けを喫したスウェーデン人、オット・ワリンが米国進出後4戦目のリングに上がった。

 対戦相手は、2019年5月18日にデオンテイ・ワイルダーの持つWBCヘビー級タイトルに挑み、初回でKOされたドミニク・ブラジール(35)。ブラジールは、2016年6月25日にIBF王者のアンソニー・ジョシュアにも挑戦し、7ラウンドで敗れている。

 ワリンvs.ブラジール戦は、言わばヘビー級の世界戦線に踏み留まるサバイバルマッチであった。

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 スロースターターであるブラジールに対し、サウスポーのワリンは効果的に左ストレートを放っていく。5ラウンドにはブラジールの右目が塞がった。

 スウェーデン人ファイターは、103発のジャブを放ち、37をヒット。手数でもブラジールを圧倒した。

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 両者は12回フルにパンチを交換し、118-110、117-111、116-112と3-0判定でワリンが勝者となった。

 アメリカのリングに上がるようになってから、ワリンは WBAスーパーフェザー、同ライトと2階級を制したジョーイ・ガマチェの指導を受けている。

 試合後、ワリンは言った。

 「僕は昨年もここ(モヒガンサン・アリーナ)で試合をしているから、それがアドバンテージになった。去年よりも今の自分は明確に目標を定めている。フットワーク、スピード、そしてディフェンスと格段に進歩した。何発かパンチを食ったが、深刻なものはなかった」

ダウンではないが、ブラジールがキャンバスに倒れ込むシーンも Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
ダウンではないが、ブラジールがキャンバスに倒れ込むシーンも Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 「最終的な目標は世界チャンピオンになること。それに向かって自分は成長中だ。まだ、その地に辿り着けていないからこそ、ハードワークをこなしている。相手は誰でもいい。自分がステップアップするために戦うだけだ」

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 一方「ワリンはいい選手だ。ジャブが良いね。前半狙い過ぎ、ズルズルとラウンドを進めてしまったな」が、敗者の弁。

 2メートルを超える身長で、2012年のロンドン五輪にも出場したブラジールだが、ハッキリと限界を見せた。

 ワリンも197センチである。昨今、ヘビー級ファイターたちの大型化が止まらないが、レベルは低下している。マイク・タイソンとイベンダー・ホリフィールドのエキシビションマッチが注目を集めるのは、あの時代の選手たちには客を魅了するものがあったからだ。

 ラスベガスの高級ホテル経営陣は、お寒いヘビー級を嘆く。今やUFCに人気をさらわれているそうだ。哀しいかな、そんな現状を象徴する一戦でもあった。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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