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「八村塁が流れを変えたことが勝因」ウィザーズの監督はそう言った

林壮一ノンフィクションライター
八村はチームで2番目に長い36分55秒の出場で、17得点、7リバウンド(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 現地時間2月20日、八村塁の所属するワシントン・ウィザーズは、ポートランド・トレイルブレイザーズのホーム、モダ・センターでTipOffを迎えた。

 9勝17敗で東地区の15チーム中13位のウィザーズと、18勝10敗で西地区4位につけるブレイザーズでは、どう見てもウィザーズが不利だとしか感じられなかった。

 実際、1Q終了時で31-43とビハインドを負う。この日もスターティングメンバーに選ばれた八村だったが、試合開始から1分27秒で4得点した後にターンオーバーを許し、レイアップ失敗と、目立たなくなってしまう。

118-111で西地区4位のブレイザーズから金星を挙げた
118-111で西地区4位のブレイザーズから金星を挙げた写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 それでも、ウィザーズは得点源であるシューティングガードのブラッドリー・ビールを中心にリズムを掴み、2Q終了時に61-55で逆転に成功。が、3Qではまたリードされてしまった。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 同Q残り7分52秒、八村はデイミアン・リラードをマークしていたが、簡単に躱され、ドライビングレイアップを許してしまう。同じ土俵に立ってはいるが、両者の差は如何ともし難い。

 この時点での八村は7本のシュートを放って成功したゴールが2本と、決して喜べる数字ではなかった。

エースのブラッドリー・ビール(背番号3)は、この日37得点
エースのブラッドリー・ビール(背番号3)は、この日37得点写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 が、残り5分21秒にビールのパスを受けてダンクを決めると、躍動し始める。最終Qでは9得点を挙げ、チームの勝利に貢献した。結局ウィザーズは、118-111で勝利する。八村は12本中5本のシュートを決め、17得点、7リバウンドをマークした。

 試合後、ウィザーズのスコット・ブルックス監督は「塁とラウル(ネト)がゲームを変えてくれた。いい仕事をしてくれた」と八村を褒め称えた。

ウィザーズのスコット・ブルックス監督
ウィザーズのスコット・ブルックス監督写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 敵地とはいえ、ポートランドは八村の母校であるコンザガ大から最も近いNBAチームのフランチャイズである。この日、記者席ではNBCスポーツで働く同窓生、ジェミー・ハドソン記者がウィザーズの背番号8に熱い視線を送っていた。

 彼女は言った。

 「母校のスターが着実に成長している姿を目に出来て、心から嬉しいです。23歳の彼は、自身のポテンシャルを磨いていますね。今日は八村にとってウィザーズにおける68回目のスタメンでした。チームの重要なパーツとなっていると思います。

 オフェンス面ではラッセル・ウェストブルックとの相性が良さそうですね。今後、もっともっといい連係が生まれるでしょう。今シーズンの八村の平均得点は13.2ですが、それ以上の働きをしているんじゃないかしら。

 ディフェンス面でもこのゲームでは3つのスティールをマークし、ポートランドのスーパースターであるデイミアン・リラードのシュート成功率を3分の1としましたね。ウィザーズにおいて、もっともっと貴重な存在になっていく選手だと信じています」

ウェストブルックは27得点11リバウンド13アシストのトリプルWを達成
ウェストブルックは27得点11リバウンド13アシストのトリプルWを達成写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 またFOX系の地元TV局のレポーター、ニック・クルップケは八村を次のように評した。

 「当たり負けしないいい体をしているね。十分、NBAでやっていける素材だと思うよ。何と言っても八村の武器は若さだ。自分が出場できるウィザーズに属し、プレー時間を与えてもらっているのだから、それを活かして経験を積んでほしい。

 もう少しシュートの精度を上げる必要があるだろうな。3ポイントは苦し紛れに打っていたようだ。クイックネスも向上させるべきだね。伸びしろに期待したい選手だよ」

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 昨シーズンと比較し、八村の表情には余裕が見られた。NBAで揉まれることが、血となり肉となる。そして明日に繋がる。

 ブレイザーズ戦を含め、4連勝したウィザーズの次の相手は、レブロン・ジェームズ率いる王者、ロスアンジェルス・レイカースだ。果たして、どんな戦いを見せるか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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