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ファーストラウンドでKO勝ちした注目のスーパーウエルター級20歳

林壮一ノンフィクションライター
Photo: Sean Michael Ham/TGB Promotions

 1月30日に催されたIBFスーパーミドル級タイトルマッチの前座で、業界トップのリングアナウンサー、ジミー・レノン・ジュニアに「無敗の若きセンセーション」と紹介されたスーパーウエルター級のジョエイ・スペンサー。

 面構えも、気の強さも、デビュー当時のフェルナンド・バルガスを彷彿させる。

Photo: Sean Michael Ham/TGB Promotions
Photo: Sean Michael Ham/TGB Promotions

 スペンサーの動きはシャープだ。第1ラウンド1分。左フックで対戦相手の アイゼア・セルドンを半回転させ、狙い澄ましたワンツーをヒット。

 右ストレートを顎に直撃されたセルドンは、マリオネットのように体を捻りながらリングに崩れ落ちる。

 スペンサーの右は伸びがあり、スピードもタイミングも申し分なかった。まさしく<芸術的な一発>だった。

 Photo: Sean Michael Ham/TGB Promotions
Photo: Sean Michael Ham/TGB Promotions

 カウント8で起き上がったセルドンだが、左腕をスペンサーに巻き付け、右の拳でラビットパンチを出すくらいしか策が無い。この行為でセルドンには2ポイントの減点が告げられる。

 成す術を失ったセルドンは大振りのパンチを振るうが、スペンサーは上下左右のステップで、自分の距離を保つ。

 そして2分12秒にロングフックでダメージを与え、ワンテンポおいて2秒後にロングレンジからの右ストレートを浴びせる。

 セルドンが腰からダウンすると、レフェリーが試合を止めた。公式ノックアウトタイムは2分15秒。

Photo: Sean Michael Ham/TGB Promotions
Photo: Sean Michael Ham/TGB Promotions

 ボクシングの美しさを見せながら一方的な勝利を飾り、自身の戦績を12戦全勝9KOとしたスペンサーは、試合後、次のように話した。

 「如何に仕留めるのが最善かを自分は理解していた。正直、どのように(ラビットパンチの)報復するかを考えていた。ヤツを痛めつけるチャンスを窺っていたんだけれど、レフェリーが試合を止めてしまった。

 3月に21歳になるが、俺はもっともっと強くなる。そして今日のように相手を倒して、更に自信を深めていく」

Photo: Sean Michael Ham/TGB Promotions
Photo: Sean Michael Ham/TGB Promotions

 確かにスペンサーはセンセーションとなれる逸材だ。今後、どのように伸びるか非常に楽しみな選手である。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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