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2年目に挑む八村塁の同期生、ナシアー・リトル

林壮一ノンフィクションライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ナシアー・リトルにとって、今シーズン3度目となる出場は、80-100でリードされた最終Qの、残り4分10秒においてだった。

 現地時間14日に行われたホームゲームで、ポートランド・トレイルブレイザーズの背番号9は、若手3名と共にコートに入った。もはや逆転は無理、という状況での起用である。

 交代から40秒後に初めてボールに触れたリトルは、自身が出したパスでターンオーバーを許してしまう。

 その後、ディフェンスで身体を張り、オフェンスでは味方からのパスを要求したがボールは1度も彼に渡らなかった。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 2000年2月11日生まれのリトルは、NBA選手となって2年目である。

 一年前はルーキーらしく、ミッキーマウスが描かれたピンク色のバックパックをしょっていた。その時期にNBA同期生である八村塁について質すと、リトルは言った。

 「コンザガ大と試合したことがあるので、八村のことは大学時代から知っている。力のある選手だし、今年は彼にとっていいシーズンだよね。サイズも才能も申し分ないでしょう。オールスター時にはライジングスターチームにも選ばれたしさ。同期として負けらないよ」

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 リトルは自身の歩みについても話した。

 「自宅のソファで父親と共にNBAを観戦し、コービー・ブライアント、カーメロ・アンソニー、レブロン・ジェームズらに憧れ、5歳の時にバスケットボールを始めたんだ。当時から、バスケ界の頂点でプレーしたいと思っていた。11歳から真剣にNBAを目指したよ」

 米国海軍兵だった両親は、「目標を定めて、それに向かって全力で取り組みなさい。何事も結果を出すのは容易いことじゃない。だから死に物狂いでやりなさい」と彼に言い聞かせた。

 その後、リトルはマイケル・ジョーダンの母校であるノースカロライナ大に進学。1シーズンのみプレーし、プロ入りを宣言。昨季のドラフト25位でトレイルブレイザーズから指名され、契約した。

 「人生最大の喜びだった。本当にNBA選手になれるんだ。夢が叶ったぜ!ってね」

 ルーキーとして48ゲームに出場し、172得点、108リバウンド、22アシストを記録した。

ミネソタ戦の4Q残り4分34秒でシュートを決めた
ミネソタ戦の4Q残り4分34秒でシュートを決めた写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 リトルの今シーズン初出場は、1月7日のミネソタ・ティンバーウルブス戦の4Q、残り7分47秒でであった。3分3秒後にリバウンドをとり、その9分後にジャンプショットを決めた。

 同ゲームは135-117でトレイルブレイザーズが勝利したが、リトルが何度ボールを求めても、アンファニー・シモンズやCJ・エレビーといった同年代のチームメイトからパスは出かった。彼ら若きガードは「俺が決める!」という思いが強く、リトルが目に入っていないかのようだった。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 リトルは8日のオンライン会見で「とにかく地道にトレーニングを積み重ねることが大事だと思う。自分の仕事を続ける」と語った。彼が現状に満足している筈もないが、その言葉は、リトルが耐えることの意味を知っているように聞こえた。

 リトルにはミッキーマウスのバックパックを笑顔で使い続けた明るさがある。今を乗り越え、真の実力者に育ってほしい。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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