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圧勝したWBA暫定スーパーミドル級王者だが……

林壮一ノンフィクションライター
Photo: Sean Michael Ham/TGB Promotions

 キューバ出身のWBA暫定スーパーミドル級チャンピオン、デビッド・モレル(22)。身長185センチにして、リーチ199センチのサウスポーだ。

 アマチュア戦績48勝(12KO)5敗。2016年ユース世界選手権で優勝し、最優秀選手に選ばれた。2017年キューバ・ナショナル王者、2018年インドで開かれた国際トーナメントでも優勝を飾った。

Photo: Sean Michael Ham/TGB Promotions
Photo: Sean Michael Ham/TGB Promotions

 2019年7月、常夏の祖国キューバを離れ、アメリカに移住。雪の多い極寒の地、ミネソタ州ミネアポリスで暮らし始め、翌月プロデビュー戦で初回KO勝ち。プロ3戦目で空位となっていたWBA暫定スーパーミドル級王座を獲得した。

 そして12月26日、ノンタイトル戦で、26勝(16KO)3敗1分けのマイク・ゴロンスキと対峙した。

Photo: Sean Michael Ham/TGB Promotions
Photo: Sean Michael Ham/TGB Promotions

 試合開始直後からモレルは的確にパンチを当ててペースを握る。ビルドアップされた体は、躍動感を伝えた。

 一方のゴロンスキは、動く度に脇腹の贅肉がタプタプと揺れる。頭をつけて左右のフックを見舞うが、スローだ。またモレルのパンチがほとんど見えていない。

Photo: Sean Michael Ham/TGB Promotions
Photo: Sean Michael Ham/TGB Promotions

 初回2分が過ぎる頃には、ハッキリと両者の差が出た。モレルは同ラウンド終了間際に、左ストレート、右、左ストレートのコンビネーションを浴びせダウンを奪う。

Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions
Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions

 翌2ラウンド、同ファイトを中継したFOXのアナウンサーが、「ミスマッチ」と言い切った内容であるにも拘わらず、WBA暫定王者は格下を仕留めきれない。

 重心が高く、パンチが手打ちで体重がのらず、踏み込みも浅いのだ。

Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions
Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions

 結局、第3ラウンド2分45秒にゴロンスキのダメージを考慮したレフェリーが試合を止めたが、セミファイナルに登場したファン・マシアス・モンティエル以上のインパクトをモレルが残すことはかなわなかった。

 モレルが「暫定」ではなく正規王者となるには、サウル・"カネロ"・アルバレスを下さねばならない。IBF同級チャンピオンのカレブ・プラント、WBO王者のビリー・ジョー・ソーンダースをターゲットにするとしても、もう数段レベルアップしなければ道は険しい。

 このキューバ人アマチュアエリートが、どう化けるかに未来はかかっている。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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