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サッカー米国代表となったシンデレラボーイ

林壮一ノンフィクションライター
右端がファルファン(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 米国プロサッカーリーグ(MLS)も、新型コロナウィルス感染の影響を被り、2月末日から10月上旬までの予定が組まれていた昨シーズンが、開幕から1カ月で休止となった。

 特別案として7月8日から8月11日までディズニーワールドにてトーナメントが開催され、その後3カ月かけてリーグ戦、11月20日より12月12日までの期間にプレイオフが行われた。

 8月にトーナメント戦で優勝を飾り、コロナウィルスの大打撃を受けたアメリカ合衆国のサッカー界に希望を与えたのは、ポートランド・ティンバースだった。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 ティンバースの歴史において、最年少でプロとなったマルコ・ファルファン(22)は、昨シーズンが始まる前「とにかく1試合でも多く出場し、チームに貢献したい」と話していた。

 ポートランドの隣町であるグレシャムの出身で、イーストサイド・ティンバースのジュニアユースから、アカデミーに昇格。更に、18歳にして1軍に引き上げられた左サイドバックである。

 生え抜き選手であり、地元ファンは若き才能に期待をかけながら成長を見守っていた。デビューした2017年は6試合に出場し、そのうち5回はスタメンに名を連ねた。

 ティンバース2軍の公式戦にも57試合出場しながら研鑽を積み、2020年は14試合で1軍のピッチに立った。「ティンバースで活躍し、ゆくゆくはA代表になってワールドカップに出る」という自身の夢に向かって歩を進めていた。

写真:ロイター/アフロ

 ファルファンは、12月9日にフロリダ州フォートローダーデールで開かれた国際親善試合、対エルサルバドル戦でA代表に選出され、46分からアメリカナショナルチームの背番号15を身に纏ってピッチを駆け抜けた。この試合は6-0でアメリカが大勝した。

 しかし13日、ティンバースはそのファルファンを30万ドルでロスアンジェルスFCにトレードするとアナウンス。2021年1月1日より、ファルファンはLAの選手となる。

 結局、ティンバース1軍でのプレーは37試合、そのうち24回がスタメンでの出場という結果に終わった。本職は左サイドバックだが、両足を使えるファルファンは、右サイドもこなせる。

写真:ロイター/アフロ

 米国A代表でも、その点を高く評価された。だが、ベネズエラ人の監督が指揮を執るティンバースは、アルゼンチン、コロンビアなど、南米系の選手で構成している。

 メキシコ移民の血が流れるファルファンは、ホームグロウン選手でありながら、あまり大事にされなかった。チームはファルファンがいるにも拘わらず、新たなレフトバックをヒューストン・ダイナモから獲得した。

 故郷のファンが落胆するなか、ファルファンは次を見据えている。ひょっとすると、東京五輪でプレーするかもしれない。

 新天地では若手ではなく、代表選手として扱われる。煮え湯を飲まされはしたが、2021年はファルファンにとって飛躍の年となりそうだ。悔しさをぶつけてほしい。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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