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アメリカに進出した18歳のメキシカン

林壮一ノンフィクションライター
Sean Michael Ham/TGB Promotions

 18歳のメキシカン、ライト級のフェルナンド・モリ―ナが自身4度目のリングに上がり、22歳のメキシコ系アメリカン、テオドーロ・アロンソに判定勝ちした。

Sean Michael Ham/TGB Promotions
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 モリ―ナは足が速く、目がいい。まだ荒削りながら、ディフェンスに光るものがある。

 左右の動きでアロンソを翻弄。LA在住で地元ファンにアピールしたいアロンソは、何度かスイッチを試みたが、スピードの差は埋まらなかった。

Sean Michael Ham/TGB Promotions
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 2019年8月に祖国でデビューしたモリ―ナは、3戦目からアメリカを舞台に戦っている。プロモーターが彼に可能性を見出したのだ。

 この日も2名のジャッジが60-54、残る一人が59-55というスコアで6回戦に勝利した。

 モリ―ナは259のパンチを放ち79をヒット、戦績を4戦全勝2KOとした。アロンソは333のパンチを繰り出し、ヒットは59。3勝3敗となった。

Sean Michael Ham/TGB Promotions
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 モリ―ナは2002年6月生まれ。

 アメリカの同年齢は今年の6月に高校を卒業してそれぞれの道を歩む筈が、新型コロナウイルスの影響で卒業試験は簡易的に終了。卒業式も無し。進学も宙ぶらりん。家の近所でアルバイト、もしくは受け入れてくれるコミュニティーカレッジ(短期大学)にひとまず入学し、卒業時に4年制の大学に移る道を模索しているような若者が多い。

 もっとも高校卒業まで義務教育であるにも拘わらず、半数が中退してしまうのがアメリカ合衆国だ。10代にして、その日暮らしで糊口を凌ぐ者も数え切れない。

 かつて私はネバダ州の公立高校で教壇に立っていたが、受け持ったクラスのほとんどの学生が中退していった。

 昔の教え子の姿を想起し、自分のゴールに向かって真っすぐに進むモリ―ナの姿から、瑞々しさを感じた。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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