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急遽、出場選手が変更したIBF暫定ウエルター級王座決定戦、間もなくゴング

林壮一ノンフィクションライター
対戦相手が変わり、試合4日前に声明を出したリピネッツ  写真:AP/アフロ

 ロシア人であるセルゲイ・リピネッツ(31)は、現地時間10月24日にIBF暫定ウエルター級王座決定戦として、クドラティーリョ・アブドカクロフ(27)との試合を迎えるはずであった。しかし、試合の僅か4日前に、対戦相手の変更が発表された。

 リピネッツが拳を交えるのは、18戦全勝12KOのカナディアン、カスティオ・クレイトン(33)。ロンドン五輪カナダ代表で、現NABAウエルター級王者である。米国のリングに上がるのは今日が初めてだ。

 ご存知のように、リピネッツは2017年11月4日にIBF世界スーパーライト級王座決定戦で、近藤明広に判定勝ちしてチャンピオンとなった。が、初防衛に失敗。王座転落後、階級を上げて再起した。

 昨年7月20日にWBOウエルター級インターコンチネンタルタイトルを獲得して以来のファイトとなる。戦績は16勝12KO1敗。

 リピネッツは言う。

 「相手は変わったが、練習を休んだことはない。クドラティーリョ・アブドカクロフ戦は、ヤツのビザの発給が遅れて延期になったり、やるのかやらないのかハッキリしなかったので、こういう事態も予測できた。特に問題はない。試合に向けての集中は切らしていない。誰が相手だろうが、ミスのない準備をして来たよ。

 トレーナーであるジョー・グーセンは技術のみならず、まるで精神科医のように俺を支えてくれる。困難な状況に置かれても、それを受け入れ、冷静に対処できるようにしてくれるんだ。だから、目標を見失わずにいられる。

 クレイトンは豊富なアマチュアキャリアがあるね。彼のスタイルは確認した。アブドカクロフの方が攻撃的だが、正確性、我慢強さではクレイトンが上だろう。どちらが難しいとか、簡単だとかは考えない。どんな試合でも、やり難さはある。ただ、目の前の仕事にベストを尽くすだけさ。

 俺は文句など口にせず、イバラの道を歩んできた。13戦目で世界タイトルマッチに漕ぎ着けた。この競技のトップ選手だという自負がある。

 ボクシング界に自分の名を刻み、己の時代を築きたい。俺の過去など気にせずに、これからを見てほしい」

 急遽、対戦相手が変わったリピネッツも、突然リングに上がれと言われたクレイトンも、酷な気がするが……プロとしてリングに上がる以上、言い訳はできない。

 一体、どんなファイトとなるか。間もなくゴングが鳴る。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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