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アルゼンチン人コーチが語る「Jリーグにアルゼンチン選手が少ない理由」

林壮一ノンフィクションライター
ボカのスターだったスケロットは、現在、LA Galaxyで監督を務める(写真:ロイター/アフロ)

 実兄のピチは、あのディエゴ・マラドーナと共にワールドユース東京大会(1979年)で世界一となった右ウイング。息子は、栃木SCのFW、エスクデロ競飛王。自身は、元アルゼンチンユース代表&ビーチサッカーアルゼンチン代表であるセルヒオ・エスクデロ。

 昨年末から、川越市のフットサル場で自身のスクールを始め、この程、埼玉県のジュニアユース、トリコロールFCのコーチとなった彼に話を聞いた。

撮影:著者
撮影:著者

 3月28日の練習試合で、僕の息子は鹿島アントラーズから1点とりました。結果は1-1。今季は競飛王にとってプレーし易い環境のようですし、コンディションも良さそうなので、頑張ってほしいです。

 また、セレッソ大阪のMF、レアンドロ・ルイス・デサバトにも注目しています。とてもいい選手です。なかなかアルゼンチンの選手って、日本に来ないんですよ…。

 日本サッカーがプロ化に向かっていた頃や、Jリーグ初期にはアルゼンチン人選手が結構いました。僕の兄、ピチ・エスクデロもそうですが、ラモン・ディアス、モネール、トログリオ、ウーゴ・マラドーナとかね…。皆、「日本はおカネもいいし、治安もいい!」って喜んでいました。でも、アルゼンチン人にしてみれば、税金が高いんです。手にした給料の40%くらいを引かれてしまうので。

 ブラジル人選手たちは、一旦日本に税金を納めても母国に帰って手続きをすれば、8割は戻って来るそうです。でも、アルゼンチン人選手にはそういった解決策が無いんですよ。それなら、コロンビア、メキシコ、チリ、あるいはアメリカで稼ごう、という気持ちになるんですね。

セバスティアン・ブランコ(左)撮影:著者
セバスティアン・ブランコ(左)撮影:著者

 特にアメリカのMLSは「稼げる」って、アルゼンチン選手に人気があります。A代表の経験もあるMFのセバスティアン・ブランコ(ポートランド・ティンバーズ)は、『アルゼンチンリーグは中盤でガツンガツンとぶつかり合う1対1があるが、アメリカのサッカーはスペースを有効に使えるので、自由にやれる』と語っています。プレーし易くて、治安も良く、子供たちの教育面も充実していたら、その地を選びますよね。アルゼンチンに比べれば削り合いが少ない分、長くプレー出来るでしょうし。

 ここ10年くらい、アメリカのサッカー熱が上がっています。80年代は女子のスポーツのように見られていましたが、今、至る所にサッカースクールがあります。北米リーグが潰れたとはいえ、ペレやベッケンバウアーもいましたし。MLSになって、2007年にデビッド・ベッカムが入ったことで火が点きました。カカ、イブラヒモヴィッチ、ヴィッセル神戸で引退したダビド・ビジャなど他の有名選手もMLSを目指すようになりました。ビジャは日本に来る前の4シーズン、MLSでプレーしていましたよね。

撮影:著者
撮影:著者

 また、現在LA Galaxyで監督を務めるギジェルモ・バロス・スケロットは(元アルゼンチン代表)、ボカ・ジュニアーズの顔として16ものタイトルを獲得し、後に監督にも抜擢されています。彼も現役時代にMLSでプレーしており、アメリカという国に可能性を感じたんでしょう。アメリカでいい結果を出すことを期待したいですね。

 アルゼンチン選手が日本にも沢山来るようになると、もっともっと活性化するように思うのですが…。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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