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フォトグラファーに訴えられたKINGレブロン。裁判の行方は……

林壮一ノンフィクションライター
スポーツフォトグラファーなら、誰もが撮りたいKINGレブロン(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 アメリカ時間の3月24日、KINGレブロン・ジェームズが米国人フォトグラファー、スティーブン・ミッチェルから訴えられた。レブロンは、昨年12月13日に行われたLA Lakers vs. Miami Heat 戦の3Qで右手ダンクを披露。その写真をレブロンが撮影者の許可なく、自身のインスタグラムやFacebookに使用した為、ミッチェルが著作権の侵害だと声を上げたのだ。

 

 ミッチェルはフリーランスのフォトグラファ―であり、自身の作品を様々な媒体に売ることを生業としている。米国で最も権威のあるスポーツ総合誌『Sports Illustrated』をはじめ、『ESPN』など大手メディアで活躍する実力派だ。いかにレブロンと言えども、無料で己の写真を使われてはたまらない、という思いであろう。

 同ゲームでレブロンが率いるLakersは、苦しみながらも113-110でHeatを下した。この日のレブロンは28得点、12アシストのWダブルを記録。マイアミに乗り込み、2万13人で埋まった敵地で上げたAWAY13連勝目に達成感を覚えたに違いない。

 レブロンがFacebookで自分のダンクシーンをアップしたのは試合の翌日。勝利の余韻に浸っていたのかもしれない。本人もしくは、KINGが持つ社のスタッフがセレクトした右手ダンクは、それだけ会心のプレーだった筈だ。

 本件は、法的に考えればレブロンに分が悪い。が、こんな事態となってもKINGはFacebookからその写真を消してはおらず、誰の作品かも記していない。

 原告の請求額は15万ドル。KINGにしてみれば痛くも痒くもない金額だ。ミッチェルもカネというより、自身の仕事を軽視されたという思いがあるように感じられる。

 ここで思い出すのは元世界ヘビー級王者(WBC、WBA)、ティム・ウィザスプーンの言葉だ。述べるまでもないが、彼が戦った世界タイトルマッチは全てTV中継された。2000年代初頭にティムのドキュメンタリーが作成され掛かった際、作り手はチャンピオン時代のファイト映像を使おうとした。しかし、何万ドルもの著作権の壁に阻まれ、断念している。

撮影:著者
撮影:著者

 ティムは「俺が映っているのに自由にならないんだな…」とボヤいていた。ティムもSNS愛好家なので、今でも防衛戦のKOシーンなど使いたいだろうが、一切タッチしていない。

 あるいはKINGレブロンにも「被写体は俺じゃないか」という思いがあるのかーーーその心情も理解できる。

 果たして、裁判の行方は? どういう戦いになるにせよ、レブロンが法廷でもKINGらしく振舞う様を見てみたい。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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