井上尚弥、決戦のゴングまであと3日

撮影:山口裕朗

 井上尚弥と"The Filipino Flash"ノニト・ドネアとの試合まで、今日を入れて残すところ3日となった。今回は、井上尚弥がプロデビューしてから全てのファイトを撮り続けている元プロ10回戦ボクサーのフォトグラファー、山口裕朗に話を聞いた。

 山口は金子ジムに所属したかつてのA級ボクサー。10勝のうち6つのKO勝ちを飾っている。引退後、写真を学び、現在はリングサイドからファインダー越しにボクシングを見詰める。

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 井上尚弥選手がU15の大会に出場した時、偶然にも彼を撮影していたんですよ。ですが、その時のことは何も覚えていないんですよね…。

撮影:山口裕朗 U15の大会にて
撮影:山口裕朗 U15の大会にて

 高校時代に頭角を表し、「座間に凄い選手がいる」と話題になっていました。当然、僕にもそんな噂が聞こえて来ました。高校7冠というアマチュアキャリアが図抜けていましたから、プロテスト前から当時のライトフライ級日本王者、黒田雅之選手とスパーリングを重ねていたんです。プロテストの相手も、黒田が抜擢されました。こんなことは異例中の異例ですよね。

撮影:山口裕朗 プロテスト
撮影:山口裕朗 プロテスト

 試合とスパーリングは違いますが、プロテストのスパーも尚弥選手が圧倒していました。速く、強く、目も良く、トータルで物凄い逸材だな、と。ただ、その時点で先のことは予想できなかったんです。プロではケガで消えていく選手もいますし、苦手なタイプと当たって崩れてしまう選手も少なからず見ていましたから。「これからも撮り続けたい選手だな」と食指を動かされたのは間違いありませんが。

撮影:山口裕朗 デビュー戦
撮影:山口裕朗 デビュー戦

 2012年10月のデビュー戦も、思った通りの強さで圧勝でしたね。

撮影:山口裕朗 日本タイトル、田口良一戦
撮影:山口裕朗 日本タイトル、田口良一戦

 4戦目、2013年8月25日に田口良一選手を判定で下して日本ライトフライ級タイトルを手にしましたが、尚弥選手はライトフライ級では減量がキツかったんじゃないかな。今、思い返せば、ライトフライ級時代の彼は身体がしぼんでいました。体全体の迫力が無かったように記憶しています。持っているものを発揮できていなかった印象ですね。

撮影:山口裕朗 ナルバエス戦では計4度ダウンを奪った
撮影:山口裕朗 ナルバエス戦では計4度ダウンを奪った

 WBCライトフライ級タイトルを獲得し、1度防衛した後、一挙に2階級上げましたよね。そして前哨戦を挟まずにオマール・ナルバエスの持つWBOスーパーフライ級に挑戦しました。

 同タイトルを11回も防衛し、1度もダウンした経験の無い名チャンピオン、ナルバエスを、試合開始のゴングから30秒足らずでガードの上から叩いて倒した尚弥選手の姿を目にし、僕は「恐ろしい」と感じました。カメラを構えながら大興奮でしたね。

 個人的には、あのナルバエスが倒れること自体が信じられなかったですし、そのうえで「こんな簡単にキャンバスに沈むのか」と驚愕しました。第2ラウンドのKOシーンもボディで倒して、戦意を喪失させてのフィニッシュでしたよね。「あれだけのチャンピオンを、こんな形で料理してしまうのか」としびれました。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 WBOスーパーフライ級タイトルを7度防衛した後、バンタムに上げてからの3試合は、試合を非常に早く終わらせていますから、まだ未知な部分がありますよね。

 ノニト・ドネアは、フェザー級に上げて戦っていた頃は、いいファイトができていませんでしたが、バンタムに戻してから、昔の片鱗が窺えます。伝説的王者(※獲得したベルトは、IBFフライ、WBAスーパーフライ暫定、WBA、WBC、WBOバンタム、IBF、WBOスーパーバンタム、WBAフェザー)であっても、もはや全盛期のドネアではない。36歳ですから、年齢的にも反射神経等が衰えている筈。それでも百戦錬磨ですから、引き出しは大いにありますよ。尚弥選手のような速い選手、パワーのある選手との対戦経験もあります。試合の展開作りやピンチに陥った際のごまかし方には長けているでしょう。

 しかし…です。今の尚弥選手のスピードにはついていけないように思いますね。尚弥選手は今、ノリにのっていて、まだまだ成長過程にありますから、普通に考えれば井上尚弥がKOで勝つでしょう。