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「必ず世界王者になる」と太鼓判を押された男の兄も期待を背にプロデビュー

林壮一ノンフィクションライター
撮影:山口裕朗

 10月30日、アマチュアで5冠(92戦82勝(20KO)10敗)を達成し、拓殖大学で主将を務めた重岡優大(22)がプロデビューを飾った。WBOアジアパシフィックミニマム級王者、銀次朗の実兄である。

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20190729-00136036/

 「弟を見ていて、プロは楽しそうだなと思って」と、ゴング前に白い歯を見せていた優大だが、試合運びは実に落ち着いたものだった。セコンドの一人として、銀次朗も姿を見せた。

 優大は、タイのマノップ・ウドムパナーワーリーを第2ラウンド2分16秒で沈め、初陣を飾った。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 「自分の試合より緊張しましたよ。ポカをやらないようにって思いながら見ていました」(銀次朗)

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 「大学の仲間、ボクシング仲間が大勢応援に来てくれて、嬉しかったですね。そういう意味での感動がありました。もっと早く試合を終わらせることもできたと思いますが、あえてプロの8ozのグローブで、ガードの上から相手に打たせてみたり、自分がパンチを出した時に拳が痛いのかなと確認しながら戦っていました」

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 この兄弟は、アマチュア時代に公式戦で1度だけ対戦している。兄が開新高校3年、弟が1年次にインターハイ予選の熊本県大会決勝で顔を合わせ、試合開始のゴングと同時に弟のコーナーからタオルが投入された。高校の指導者や重岡兄弟の両親が話し合い、試合前からそんな筋書きが出来ていた。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 「色々な大学から誘ってもらいましたので、行ってみようと思いました」と拓大に進学した兄に対し、弟は高校卒業後、いち早くプロを選択する。昨年9月にデビューし、4戦目でWBOアジアパシフィックミニマム級タイトルを獲得。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 「兄弟で戦うことはありませんが、切磋琢磨してお互いに世界チャンピオンになりたいですね」(銀次朗)

 「あいつの声がコーナーから聞こえたら、安心しましたよ。今は弟の方が先を走っていますが、気付いたら追いついていると思います(笑)」(優大)

 ワタナベジム・渡辺均会長も言う。

 「2人共、素材として申し分ありません。世界を狙わせます。兄も弟も年内に次の試合を組めるかな‥‥。互いに刺激し合って、いいライバルとして育ってほしいですね」

 重岡兄弟、ぜひ一度生でご覧ください。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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