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12.23横浜アリーナでスティーブン・バトラーを迎え撃つ村田諒太

林壮一ノンフィクションライター
撮影:山口裕朗

 およそ1年前にロブ・ブラントに奪われたWBAミドル級タイトルを、7月12日のダイレクト・リマッチで奪還した村田諒太。第1戦でワンサイドの判定負けを喫したブラントに対して、試合開始直後から激しくプレッシャーをかけ、2ラウンドで圧勝した様は見事だった。

 来る12月23日に迎え撃つ挑戦者は、WBO1位のカナディアン、スティーブン・バトラー(24歳)。戦績は、30戦28勝(24KO)1敗1分。記者会見での話ぶりを聞く限り、実直そうな男だ。スーパーウエルター級でIBOインターナショナルタイトルを手にしてからミドル級に転向。2018年10月8日にはWBCフランス語圏ミドル級王座(英語があまり上手くないのは、フランス語を母国語としているからであろう)、今年の5月2日にはWBCインターナショナル同級王座を獲得している。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 記者会見の冒頭で村田は言った。 

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 「ありきたりな言葉ですが、ベストを尽くします。この前の試合で凄くいい評判をもらいましたけれども、これで満足しているかというとそうではなく、まだ僕自身ボクサーとして、もっとやりたい事や叶えたい夢があるので、その夢を叶える一歩にしたいと思っています。楽しみにしていて下さい」

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 バトラーについて、村田は次のように話した。

 「まず、この試合を受けてくれた事に感謝したいですね。WBOではランキング1位で、指名挑戦権を持つ、評価された選手だと思います。彼に勝つ事が自分の評価を上げてくれると思いますし、そういう試合にしていきたいです」

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 「今回は相手も違いますし、タイトルを取り返してからの試合という事で状況も違います。色んな面で今までと違うんですけれども、自分自身がいい試合をした時というのはモチベーションが凄く高かったので、そのモチベーションをどう持っていくかというのが僕の中で大事だと思っています。

 綺麗事でモチベーションは上がらなくて、自分自身の気持ちに正直になって、その気持ちで戦わなきゃいけない。どうやればいいのか? もしかしたら、自分は日本人としてのボクサーとしてはある程度の名声を頂いたかもしれません。でも、僕がボクサーの中でTop Of Topかと訊かれたら、まったくそうではない。それを目指したいというのが、正直なモチベーションになると思いますし、その気持ちを持って、この試合に臨みたいです」

 いつもながら村田は快活に話した。いい表情をしていた。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 そんな村田を見ながら思い出されたのは、ジョージ・フォアマンが私に語った言葉である。

 「25歳の頃よりも、45歳の私の方が間違いなく強かった。若き日の私はパワーはあったが、自分をコントロールし切れない部分があった。経験によって、インテリジェンスや耐久力がついた部分も大きい。防御を意識するようにもなっていたね。さらに、カムバック後の私には明確な目的があった」

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 今、村田諒太は、ハッキリとしたゴールを見据えている。スティーブン・バトラー戦で何を見せるか? 期待したい。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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