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高校5冠からプロヘ「必ず世界王者になる」と太鼓判を押された男が手にしたベルト 

林壮一ノンフィクションライター
左ボディ1発で相手を仕留めた銀次朗 撮影:山口裕朗

 高校5冠から鳴り物入りでプロに転向したサウスポーの重岡銀次朗。2018年9月25日、京口紘人の前座でプロデビューを果たした彼は、サンチャイ・ヨッブン(タイ)を3ラウンド1分22秒で沈めた。

 「プロの試合はお客さんがいっぱいいて、倒せば盛り上がるし楽しいなという印象でした。高校のアマチュアとは雰囲気が違いますよね」

 プロ第2戦は、今年2月26日。銀次朗は難なく相手を初回1分35秒でKOした。

 「相手が弱過ぎたので、盛り上がらなかったですよね。正直、あまり嬉しくなかったです」

 3戦目は4月14日。相手はフィリピン人選手、ジョエル・リノ。リノはWBOアジアパシフィックタイトルに挑んだ経験を活かし、粘った。結果は銀次朗の8回判定勝ち。

 「リノは強かったです。相手への入り方が分からなくなってしまい、冷静に戦えなかったですね。もっと、サイドからとか、色んなアングルで相手の懐に入る策、パンチを当てた後の組み立てを覚えなければいけないと思います。色々と次に向けての課題が見えましたので、また頑張ります」

 そんな銀次朗は7月27日、クライデ・アザルコンにファーストラウンド1分12秒KO勝ちして自身初のベルト、WBOアジアパシフィックミニマム級タイトルを手に入れた。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 ~悶絶~

 右のボディに銀次朗の渾身の一発を喰らったアザルコンは、テンカウントを聞いても暫く起き上がれなかった。

 試合後、銀次朗はシャワーも浴びず、トランクスもリングシューズも脱がずに白いTシャツを着て、会場のファンたちと談笑した。左肩に獲得したばかりのベルトを掛けていた。

 「リノ戦では落ち着いて戦えなかったので、今日はその点を反省してリングに上りました。アザルコンのパンチをグローブの上から受けてみて、かなり重いと感じました。だから喰わないようにしました。物足りないという相手ではなかったです。ボディの練習を重ねていたので、成果を出せて良かったです」

写真:Marvin Woods
写真:Marvin Woods

 ベルトを見ながら、銀次朗は白い歯を見せていたが、力強く言った。

 「嬉しいのは確かですが、このベルトに拘ってはいません。もっと上、世界タイトルを狙っていますから」

 この日、解説席に座っていたジムの先輩、WBAライトフライ級スーパー王者の京口も太鼓判を押す。

 「あいつのセンスはマジでヤバいです。絶対に世界チャンプになれますよ」

 重岡銀次朗、一度、生でご覧ください。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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