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村田諒太に刺激を受けた2階級制覇チャンプ京口紘人

林壮一ノンフィクションライター
撮影:山口裕朗

 WBAライトフライ級タイトルの防衛戦から1カ月。京口紘人は早くも精力的に汗を流している。「練習が終わった時点で、リミットまで4キロ弱です」と表情は明るい。

 7月12日の村田諒太、拳四朗の試合はリングサイドから観戦した。感ずるものが多かったという京口に話を聞いた。

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 村田さんの勝利は素晴らしかったですね。強いだけじゃなくて、見る者を惹き付ける、観客を沸せるという点で僕には無いものを感じました。リングサイドから見ていて熱くなりましたよ。ああいう試合を自分もしないとな、と強く思いました。

 スタミナとか考えずに倒しに行く姿。一試合に懸ける気迫。技術云々よりも闘志が伝わって来ました。入場時からピリピリしていて、「やるだけのことをやった表情だな。完璧に仕上げたな」と、本当に勉強になりました。

 もちろん闘い方もです。今までの村田さんは、相手のパンチをブロックして得意の右を当て、接近戦でボディというスタイルでしたが、ボディアッパーやロングの右フックを見せ、かつスムーズに上下に打ち分けていて、攻撃のバリエーションが増えていましたね。僕が言うのもおこがましいですが、進化していますよね。

 凄く刺激を頂きました。僕もまだまだやらなあかんことがあります。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 前座に組まれた拳四朗のWBCライトフライ級タイトル6度目の防衛戦。拳四朗が4回TKOで勝った試合も、チャンピオンの強さを感じさせるものでしたね。彼は実力者ですし、リスペクトしています。今回の拳四朗は倒すボクシングを選び、プロらしい戦い方をしました。もっと距離を取ることも出来た筈ですが、敢えて、挑戦者のパンチを喰う位置に身を置き、スリリングに戦いました。それは拳四朗がKOを意識していたからですよ。

 僕との統一戦が決まった折にも、ああいう距離で打ち合ってくれれば盛り上がるでしょうし、僕にすれば勝機が生まれます。まぁ、どんな展開になるかは分かりませんが…。

 2012年6月に行われた井岡一翔くんと八重樫東さんのWBA/WBCミニマム級王座統一戦をTV観戦し、いつかああいう試合を自分もやってみたいと思って来ました。それが近い将来実現するのかと思うと、モチベーションが上がります。

6.19の京口 撮影:山口裕朗
6.19の京口 撮影:山口裕朗

 僕が6月19日に下したサタンムアンレック・フレッシュマートは、ディフェンシブな選手でした。倒されないことだけを考えていて勝とうとしないので、消化不良になってしまいました…。相手を焦らして、ペースを乱すというのが彼の戦略だったのかもしれません。12ラウンドフルに戦って、勝てたことだけは良かったですが、やはりああいう相手にも強弱を付けたコンビネーションだったり、組み立て方をもっと丁寧にして、仕留められるようにボクシングに幅を付けたいですね。

 今、僕はシャドウにしても強打強打ではなく、リラックスして強弱を織り交ぜてやるように心がけています。ピンポイントにパンチを当てることを課題としています。

京口が取り入れたいと語った村田諒太愛用の特製ロープ 撮影:山口裕朗
京口が取り入れたいと語った村田諒太愛用の特製ロープ 撮影:山口裕朗

 会話中、京口は村田が愛用する特製ロープについて私に訊ねて来た。https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20190531-00128062/

 フェルナンド・バルガスやマルコ・アントニオ・バレラが使っていたことを伝えると、傍らにいた井上孝志トレーナーに「僕にも同じ物を作ってください。トレーニングに取り入れたいです。お願いします!」と言った。

 名チャンピオンのトレーニングが日本でも継がれていく。京口も、更にステップアップするに違いない。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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