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200年に一人の天才ボクサーが語る「村田諒太の魅力」

林壮一ノンフィクションライター
撮影:山口裕朗

 現役時代、所属していた協栄ジム会長、故金平正紀に「具志堅用高を超える逸材。200年に1人の天才」と絶賛された元WBAジュニアウエルター級1位、日本同級&日本ウエルター級王者の亀田昭雄。

 本シリーズでお馴染みの彼に、村田諒太のWBAミドル級王座奪還について訊いた。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 村田諒太、素晴らしいファイトを見せてくれましたね。僕は試合前 重心を低くして戦うといいと話しましたが、

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20190507-00124916/

今回の村田は、膝を折り、構えを低くしていました。だから、有効なボディブローを決められたんです。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 ファーストラウンドはジャブを顔面に、右ストレートをボディに打っていきました。これは後半、ロブ・ブラントの動きを止めるのにいい攻撃でした。

 続く第2ラウンド44秒の左ボディが効きましたよね。ブラントは思った以上にボディが弱い選手でしたが、チャンスと見た村田は、「ここで絶対に仕留め切る!」と残りのラウンドを考えずに、怒涛のラッシュを見せました。その精神が非常に良かったです。

 トップボクサーは世界タイトルマッチ12ラウンドを戦い抜くスタミナも大事ですが、後先を考えずに勝負に出る勇気も必要です。ガス欠を恐れず、チャンスの時にラッシュするハート。今回の村田は、そんな闘志も見せてくれました。そりゃあファンは熱狂しますよ。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 ブラントが10月20日に勝ったイメージのままリングに上がった反面、村田は前回の敗戦を反省し、一つ一つテーマをこなしたんですね。以前の彼は、相手を倒そう、倒そうと1発1発力を込めてパンチを出していましたが、今回はコンビネーションを見せました。これまでは威力のある右に頼り過ぎていましたが、今回は左右のパンチを出しながらノックアウトを狙ったところも良かったです。

 派手なKOに目がいきがちですが、村田は同じミスを繰り返さないスマートさを見せたんですよ。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 

 今回「村田は一皮剥けたな」と感じさせました。いい勝ち方をして、自信を持ったでしょう。敢えて述べるなら…もっとリズムにのってパンチを出せると、更に強くなるでしょう。勝利者インタビューで「33歳だぞ」なんて語っていましたが、まだまだ伸びる選手ですよ。とにかく、おめでとう! と言いたいですね。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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