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2階級を制覇した京口紘人へのインタビュー

林壮一ノンフィクションライター
「もっと引き出しを増やしたい」と語った京口  撮影:著者

 2018年大晦日にマカオのリングでWBAライトフライ級王者、ヘッキー・ブドラーに挑戦し、10回終了TKO勝ちで新チャンピオンとなった京口紘人。IBFミニマム級に続き、自身2本目の世界タイトルを獲得してからおよそ3カ月。WBAライトフライ級タイトル初防衛戦に向けて動き始めた京口をインタビューした。

 

いつも快活な受け答えをする京口 撮影:著者
いつも快活な受け答えをする京口 撮影:著者

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 2階級を制して、街で声を掛けられることが増えましたね。まず第一に、ライトフライ級に上げてストレスが半減したんですよ。練習のパフォーマンスも、ボクシングのクオリティも上がったんじゃないですかね。マカオでも食べながら体重を落とせましたし、ギリギリまでしっかりトレーニングできました。

 でも、山登りで言えば、まだ6合目です。自分のボクシングはまだまだ安定感がありません。大晦日のブドラー戦は、序盤からボディを叩いてペースを握って行こうというプランでした。それがほぼ作戦通りに出来たことが勝因です。ボディが鍵になると予想していました。ジャブも、相打ちでもいいからしっかり当てて行こうとトレーナーと話していました。

 世界戦という大舞台で自分のボクシングが出来たというのは、自信になりました。まぁ、自分の場合はデビュー戦でも世界戦でも、ある程度自分の力は発揮できるタイプだと思いますが。

 とは言っても、5ラウンド終了時点では1-2で負けていたんですよ。ジャッジには、相手の良さが印象的だったのでしょう。パワーでは負けていなかったと感じていますが、ブドラーは軽いコンビネーションでも、3つ、4つと当てて来ましたから、そういうブドラーの得意な部分を出させてしまったところが反省点です。

 僕はボディアッパーが得意ですが、さらに磨きをかけなくては。昨年9月(ライトフライ級王座挑戦の前哨戦)に相手からダウンをとった左フック、そして右ストレートも精度を上げたいです。自分の武器を増やしていきたいですね。元WBOライト級王者のレイムンド・ベルトランの右フックなんて巧いな~!と感心します。ああいう右フックも打っていければなと。

 世界チャンピオンレベルになると、今、持っている物を追求していくだけでは足りません。もっともっと引き出しを増やしていかなければアカンなと感じます。

 僕は上手いボクサーよりも強いボクサーを目指しています。綺麗じゃなくても、とにかく勝つ----プロはそれが大事ですよね。日本人選手は全般的に、4回戦でもフォームが綺麗です。一方でメキシコ人選手なんかは、フォームは汚くて荒いんですが、泥臭くても必ず勝つボクシングをするイメージがあります。僕はメキシコ系のボクシングが好きなんですよ。

 やはりメキシコの一流選手はボディ打ちが上手いですよね。リカルド・ロペス、チキータ・ゴンザレス、フリオ・セサール・チャベス…。彼らは接近戦の時に、絶対にダッキングを忘れないで手を出し続けますよね。ああいうスタイルを参考にしていますし、僕も練習に取りいれています。

 次の試合は、ライトフライ級として世界王者に相応しい戦いを見せたいですね。

 

プロデビュー以来コンビを組む井上孝志トレーナーと京口 撮影:山口裕朗
プロデビュー以来コンビを組む井上孝志トレーナーと京口 撮影:山口裕朗

 お互いにチャンピオンですし、やはりいずれは拳四朗とやりたいです。今の状態なら3-7で僕が不利でしょうが、戦うことに意義があると思います。アマ時代は僕の1勝3敗なので、当然、借りを返したい思いは持っていますよ。そして、仮に僕が負けても、相手が拳四朗なら、得る物も大きいでしょう。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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