日本公開まで1カ月。『ロッキー』シリーズの続編『クリード 炎の宿敵』
来年1月11日に日本公開となる『クリード 炎の宿敵』(原題『CREED II』)。
ロッキー・バルボアの最大のライバルだったアポロ・クリード。その息子を主人公とした第2作である。『ロッキーIV』でアポロの命を奪ったイワン・ドラゴが息子をファイターに育て上げ、クリード・ジュニアと対戦させるという内容だ。
『ロッキー』シリーズ6話と『クリード』の2話、計8作のなかで、最も収益をあげているのは1985年に制作された『ロッキーIV』である。米国内における売り上げが1億2千700万ドル強。日本を含む海外も合わせた総売り上げは3億40万ドル。因みに2位は『ロッキーIII』で、米国内で産んだ利益が1億2千500万ドル強、海外を含む収入が2億7千万ドル。
ビジネス的にトップ作品となった『ロッキーIV』が生まれた時代のアメリカ合衆国は、ソビエト連邦を「悪の帝国」と呼んだロナルド・レーガンが大統領の椅子に座っていた。社会情勢を読み、国民感情を刺激した点が成功に繋がったと言える。
さて、1985年の作品でロッキーに敗れたドラゴは、どんな人生を歩んでいたのかーー。それが、今回のメインテーマだ。
「すべてを失った。祖国も、尊敬も、そして妻も」
「俺は負けた」
という台詞が、胸に突き刺さる。
私はアメリカで、こうした言葉を実在の元世界チャンピオンから何度も聞かされた。スクリーンを見詰めながら、幾人もの元ファイターの姿が蘇った。
それでもドラゴは、息子の幸せを祈るパパだ。本作は、ボクサーの儚さが上手く描かれている。
シルベスタ・スタローンは、1975年3月24日に催されたモハメド・アリvs.チャック・ウェプナー戦をハリウッドの劇場で目にし、ウェプナーの闘魂に酔いしれる。劇場を出た後72時間を費やし、ウェプナーをモデルとした脚本を書いた。そして翌年、映画界に一石を投じるのだ。
無論、賛否両論あるが、ロッキーは誕生以来、多くのボクサーたちから愛されている。今回の『クリード 炎の宿敵』にも、ロイ・ジョーンズ・ジュニア、アンドレ・ウォードといった元世界王者が出演している。
42年という歳月で、独身だったロッキーは、孫を持つお爺ちゃんとなった。私たち視聴者も、同じように年を取った。
今回のロッキー・バルボアに、あなたは何を見るか? 青春と呼べた季節か、子育てに悩む今日の己か、あるいは可愛い孫との関係か-----。
試写会で私の左隣に座っていた女性は、残り15分くらいから、何度も涙を拭っていた。長く続くだけのことはある、重みのある作品だ。