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アルゼンチン人コーチが語る「森保ジャパンが成長するために」

林壮一ノンフィクションライター
「全員で走って、全員で戦う姿が印象的だった」と評された森保ジャパン(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 元アルゼンチンユース代表、ビーチサッカーアルゼンチン代表で、現在は埼玉県に発足したクラブチームFC Futureで指揮を執っているセルヒオ・エスクデロ。息子であるエスクデロ競飛王は、先日、京都サンガから韓国・Kリーグの蔚山現代に期限付き移籍し、背番号9を付けて活躍中だ。

 そのエスクデロに、森保ジャパン初陣について訊ねた。

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撮影:著者
撮影:著者

 森保ジャパンは、非常にいい形でスタートを切りましたね。僕からすれば、本当に初陣は合格点です。森保監督は、今回、攻撃的なメンバーを選びましたよね。森保ジャパンのサッカーは面白いと思いました。

 コスタリカは9月7日に韓国と試合をして0-2で敗れていましたが、決して弱くはなく、激しいプレーを見せました。ワールドカップを終え、あちらも新旧交代の時期ですが、日本を舐めた布陣でもなく、モチベーションが落ちている訳でもありませんでした。

 日本はA代表デビューの人が多く、溌剌としていましたね。皆が全力で走って、「全員で戦う」という気持ちのこもった好ゲームでした。正直、僕の中では、サムライブルーのイメージが変わりました。お世辞抜きに、非常に良かったです。

 ボールが無い時に小林悠と南野拓実が前からプレッシャーをかけ、マイボールになるとコンパクトにパスを繋いでリズムを作り出しました。また、裏を取る動きも見せたし、何度もシュートで終わっていましたね。前半に、小林が胸でボールを落として南野がシュートを打ったシーンなんか、息が合っていて、ナイスプレーでした。

 青山敏弘と遠藤航のダブルボランチも運動力が多く、長谷部と山口蛍のコンビとは違った味を出していました。前から前から守備をしてボールを奪い、前線にスルーパスという展開でした。遠藤が攻め上がって、南野にパスをして2点目に繋がったシーンも印象的でしたね。南野も何度もシュートを打てました。FWは何本外したって、最後に決めればいいのです。あの積極性は買えます。

 両サイドバックの佐々木翔と室屋成のオーバーラップも評価できます。槙野智章はポカをやりがちですが、昨日はきちんとカバーリングしていましたね。前半、コスタリカの右サイドが日本のDFを崩してシュートを放ったシーンがありましたね。そこを槙野が潰しましたが、見事な対応でした。DF陣は集中を切らさなかったですね。

 昨日の日本代表の中で、最も高評価を得たのは中島翔哉でしょう。若いうちにヨーロッパに渡って、苦労して自分を磨いていることが伝わってくるプレーでした。左サイドからの崩しを繰り返し、背番号10に相応しい活躍だったと思います。

 繰り返しになりますが、森保ジャパンのサッカーの特色は

 1)前線から激しくプレッシャーをかける

 2)細かいパスを繋いで崩す

 3)サイド攻撃を多用

 4)全員で走る

 ということでしょう。<あまり身体は大きくないけれど勤勉な日本人>に合ったサッカーだと僕は感じます。

 ただ、昨日の勝利で浮かれてはいけません。まだ1勝しただけなのです。北海道を襲った地震の影響でチリ戦がキャンセルになりましたが、チリを相手にしていたら、こんなに楽な試合ではなかったでしょう。コスタリカより、数倍強い国ですから。

 今後は、ロシアワールドカップで下したコロンビア、あるいはイングランド、ウルグアイ、我がアルゼンチンなんかを相手にして、自分たちに足りないもの……あのベルギー戦を思い出させるようなゲームをこなし、そこから学んで次に繋げる作業を積み重ねていってほしいです。適当な相手を選んで勝って喜ぶのではなく、叩きのめされながら強くなる道を選んでもらいたいですね。

 日本はお金のある国なんですから、ワールドカップでベスト8以上を本気で目指したチーム作りをするべきです。この1勝で安心してしまうと、また同じことの繰り返しになってしまいます。強豪国とアウェイで戦う強化を期待します。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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