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アマチュアボクシング界はどう変わる? ~奈良判定は可愛いものだった~

林壮一ノンフィクションライター
山根からまともに助成金を渡されなかった成松大介。アジア大会で銅メダルを獲得した(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 日本ボクシング連盟は、9月8日に臨時総会を開き、新たな理事を選んだ。

 山根明が座っていた日本ボクシング連盟会長の座には内田貞信が就いた。副会長は3名。菊池浩吉、坂巻義男、鶴木良夫という顔ぶれである。

 今回、私は“絶対匿名”を条件に、あるアマチュア関係者からコメントを得た。

 「会長の内田と副会長の菊池は、宮崎県の強豪、日章学園高校で先輩後輩の関係です。会長の内田は選手時代に副会長の菊池から指導を受けています。内田は宮崎県内で飲み屋を経営していて、金を持っているようですね。逮捕歴があるんですね…。自分のビジネスと連盟の仕事を両立できるのかという疑問は拭えません。一方の菊池は真面目な人間ですよ。元々、日章学園の教師でしたが、今後2年間は教壇に立たずに連盟の仕事に力を入れていいと、日章学園に言われたそうです」

 逮捕歴とは穏やかでないが、内田自身が自らの過去を会長就任の記者会見の場で明かしている。https://www.hochi.co.jp/sports/boxing/20180908-OHT1T50279.html

 「私が感じるのは、新体制は<反山根>で固まったな、ということです。この夏“奈良判定”という言葉がマスコミを賑わせましたが、山根政権の前は、故川島五郎が連盟の会長でした。川島は日大の助教授から教授となった男ですが、日大ボクシング部の監督も長く務めた人物です。川島政権下の“日大判定”に比べれば“奈良判定”など可愛いものでしたよ」

 川島は、露骨な“日大判定”で、自分の選手を勝たせ続けた。川島の後ろには、日大総長の故柴田勝治の存在があり、反対勢力が誕生する隙さえ無かったという。因みに柴田はJOCの会長でもあった。

 「後にプロで世界王者となる平仲明信は、ロス五輪・ライトウエルター級日本代表選考会決勝で敗れたにもかかわらず、川島が敢えて1階級上げさせ、ウエルター級で五輪に出場しました。

 1994年に開催された広島アジア大会でも、日本国内で無敵だったフェザー級の及川武史が日本代表選考会で優勝を飾りましたが、決勝で敗者となった池端敬介が“日大権力”を使って及川を押しのけ、代表選手となっています。今回、反山根で結束したグループ内には、“政治力”で日本代表となった池端も名を連ねていました」

 彼は不安気に言葉を繋げた。

 「“宮崎判定”が生まれることは無いでしょう。そんなことがあってはならない。山根が良かったとは言いませんが、AIBAを始めとした世界のアマチュア界に顔がきいたのも事実。内田がそういった国際舞台で各国のトップと渡り合えるのか? そのあたりがかなり不安要素ですね。

 まぁ、現状を注視していくしかありません。2年後の東京五輪では、いい成績を残してもらいたいですから。選手を苦しめるようなことだけは避けなければ」

 アマチュアボクシング界は、どのように変わっていくかーーー。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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