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2人の伝説による背番号9対決

林壮一ノンフィクションライター
鼻を骨折しながらも闘志を見せたルーニー(写真:Shutterstock/アフロ)

 「王として訪れ、伝説としてパリを去った男」が、米国メジャーリーグサッカー(MLS)に登場してから4ヵ月。パリ・サンジェルマンから、マンチェスター・ユナイティッドを経由してLAギャラクシーに入団したズラタン・イブラヒモビッチ(36)は、目下17試合に出場して15ゴール、6アシストを記録中だ。チームは、西地区12チーム中の5位。

 イブラヒモビッチは、8月1日に催されたMLSオールスターvs.ユベントス戦を辞退した。「オールスターゲーム出場を望んでオレに投票してくれたファンには感謝している。ユベントスはかつて在籍したチームだし、出たいと思っていたんだが…今の自分の役割は、ゴールを挙げてLAギャラクシーをプレイオフに進出させることなんだ」と語った彼は、ベテランらしく、念入りに体のケアをしている。

 

 7月29日のオーランドシティー戦では、MLS加入後、初となるハットトリックを達成。ピークを過ぎた感は否めないが、いぶし銀の働きを見せている。

 イブラヒモビッチは、今日までに67本のシュートを放ち、15ゴールを決めている。彼がボールを触ると、何かやってくれそうな空気がスタジアムに漂う。

 さて、イブラヒモビッチと同格のビッグネームがMLS東地区最下位のDCユナイティッドにも姿を見せた。3年半の契約でDCユナイティッドに入団した、ウェイン・ルーニー(32)である。イングランド代表キャップ119を誇り、DCユナイティッドのキャプテンとなったルーニーも、7月29日、キーパーの股を抜いてMLS初ゴールをマーク。コロラド・ラピッズを2-1で下した勝利に貢献した。

 先制点を挙げたルーニーだったが、その後、鼻を骨折。血塗れになりながらプレーした。

 MLS西地区のライバルチーム、ポートランド・ティンバーズの下部組織でプレーする15歳のアメリカ人少年は興奮気味に語った。

 「イブラヒモビッチもルーニーも、それぞれスウェーデン、イングランドの代表を引退したし、全盛期は過ぎたかもしれません。が、見応えと迫力は充分です。アメリカサッカー界が、彼らから学ぶものは計り知れません。イブラヒモビッチは非常に体幹が強く、DFを背にした動きなんて、圧倒的なパフォーマンスです。それプラス、絶対にシュートで終わる姿勢も見習いたい。

 ルーニーはハードワークをしながらも、動きに無駄が無いんですよね。流石にサッカーを知ってるな、と仲間たちと感嘆しながら見ています。今DCは最下位ですが、流血しながらプレーしたルーニーのハートは、チームメイトの闘争心にも火を点けたでしょう。今シーズン、2人の直接対決が無いのは残念ですが、絶対に生で2人を見たいですね」

 Jリーグでは、イニエスタとフェルナンド・トーレスという2人のスペイン人が注目されている。アメリカでは2人の背番号9が、次世代の若者を惹き付けている。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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