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200年に一人の天才ボクサーが語る「比嘉大吾がベストコンディションでもロサレスには勝てなかった」

林壮一ノンフィクションライター
写真:山口裕朗

 現役時代、所属していた協栄ジム会長の金平正紀に「具志堅用高を超える逸材。200年に1人の天才」と絶賛された元WBAジュニアウエルター級1位、日本同級&日本ウエルター級王者の亀田昭雄。

 本シリーズでお馴染みの彼が、比嘉大吾vsロサレス戦を振り返った。

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写真:山口裕朗
写真:山口裕朗

 僕自身は今回、比嘉大吾の相手、クリストファー・ロサレスの強さに驚きました。身長169cm、リーチが181cmとフライ級ではかなりの長身ですよね。手足も長い。同国のスターである、アレクシス・アルゲリョと同タイプですよ。

 戦績27勝3敗18KOですか…もっとキャリアを積めば、“アルゲリョの再来”と呼ばれるレベルまで到達できるんじゃないかな。

 左右のストレートが強く、5つ6つとまとめてパンチを打てる。ガードが高く、ディフェンスもいい。勘もいいし、打ち方も綺麗ですね。本当に「凄いのが出て来たな」という印象です。

 期待大ですよ。

 もし、比嘉がベストコンディションであっても、ロサレスにKO負けしていたでしょう。モノが違います。まったくレベルが違いました。

 フライ級の身体を作れなかったとはいえ、比嘉は勝つつもりでリングに上ったと思いますが、相手が強過ぎましたね。

 減量なんていうのは、きちんと計算してやれば出来るものです。ウエイトオーバーというのはボクサーの恥ですよ。前の防衛戦から2ヵ月しか時間が無くてコンディションが作り難いのなら、試合を決めなければよかったんです。つまり、比嘉の減量失敗は、マネージメントの失敗です。

 比嘉を指導している野木丈司トレーナーは、ミカドジム時代の僕の後輩です。非常に理論的に物事を捉え、実行する男です。その彼が付いていながらフライ級リミットに落とせなかったのは、やはり「2ヵ月という時間」でしょう。

 ただ、比嘉は今回の敗戦で学んだことが沢山ある筈です。階級を上げてまたチャレンジすればいい。まだ終わった訳じゃないと僕は感じます。陣営も、2ヵ月のスパンで試合を組んではいけないと思い知らされたでしょう。

 ロサレスがどのくらい大きなチャンピオンになるか、心底、楽しみですね。今回の比嘉戦をTV観戦しながら、僕の脳裏には何度も<ニカラグアの貴公子>アレクシス・アルゲリョの姿が蘇りました。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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