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全日本の壁となる218センチの中国人NBAプレイヤー

林壮一ノンフィクションライター
218センチ、99kgのZhou Qiはヤオ・ミンの後継者となれるか(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 「Zhou Qiは、まだ22歳。2016年にドラフトされ、下部組織であるGリーグから昇格したんだ。我々チャイニーズ・アメリカンも、チャイニーズも、否応なしに彼に注目しているよ」

 ヒューストン・ロケッツのプレス席で隣り合わせた記者がそう言って、コートを指さした。

 アトランタ・ホークス戦。4Qの終盤、ロケッツの背番号9が交代出場しようとしていた。

 「まだまだ、Yao Ming (姚明)までの道は遠いけれどね」

 ロケッツのアリーナにはヤオの背番号11が、永久欠番となった他6名のLegends番号と共に掲げられている。

 日本時間4月6日現在、Zhou Qiは16試合に出場している。ルーキーである彼はルーズボールの取り合いで弾き飛ばされ、ひ弱な部分を覗かせるものの、ウエスタンで首位を走るロケッツにおいて、確実に出場機会を増やしている。目下、平均プレー時間は5.4分。

 ロケッツのマイク・ディアントニ監督も「Zhou QiはGood」と、育てる姿勢を崩さない。体が細く迫力の無さが目立つが、出場時間と共に自信を深めていくであろう。

 1996年1月16日生まれのQiは、2011年にトルコで開催されたTBFインターナショナルU16大会に出場し、知る人ぞ知る存在となった。いくつかアメリカの強豪大学からスカウトされたものの、すべてを断り、2014年から2017年途中まで自国リーグのXinjiang Flying Tigersでプレー。その後、NBAのドラフトに掛かった。この間、中国ナショナルチーム入りを果たしている。

 本コーナーでお馴染み、元日本代表監督の吉田正彦氏は言う。

 「身体が細いですね。肩幅もないな…。でも、218センチというのは稀少価値です。私の知る限り、3人目の中国人NBA選手でしょう。世界最高峰のリーグで研鑽を積めば、物凄く伸びるでしょうね。悔しいけれど彼の存在が、また日本と中国の差を大きくすることになるのは間違いない。このサイズの選手は日本人ではなかなか出ませんよ。NBAで戦力になれそうな日本の選手も、なかなか現れそうもない…。八村塁がドラフトされれば面白いのですが」

 ヤオが在籍したロケッツは、当然、中国人選手の扱い方に免疫がある。22歳のQiには、毎日が成長の場であろう。ヤオはプレーはもちろん、英語力もかなり高かった。Qiが永久欠番#11にどれだけ近付けるか見物である。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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