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アルゼンチン人コーチが語る「明日発表される日本代表について」

林壮一ノンフィクションライター
ヴァヒド・ハリルホジッチ 監督は残りの3カ月をいかに使うのか?(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 アルゼンチン出身。兄は1979年ワールドユース東京大会でマラドーナと共に世界一となったピチ・エスクデロ。息子は現京都サンガの背番号10、エスクデロ競飛王。

 自身はアルゼンチン、スペインでプロとしてキャリアを積み、アルゼンチンユース代表、ビーチサッカーアルゼンチン代表に選出された。引退後は、柏レイソル青梅、レッズ・ユース、埼玉栄高校、エルサルバドルのプロチームでの指導者を経て、現在はFC Futureで指揮を執るセルヒオ・エスクデロ。彼が、明日発表になる日本代表(3月23日マリ戦、27日ウクライナ戦)について語った。

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写真撮影:著者
写真撮影:著者

 何度も主張してきましたが、ハリル監督は一体いつまで代表選手のテストを繰り返すのでしょうか。ロシアワールドカップまで、残すところ3カ月だというのに、こんな準備でいいのかと不安になります。怪我人は別として、スタメンを固定し、第1戦のコロンビア戦に120%の力で挑めるように調整すべきです。正直、私にはサッカーを舐めているように感じられますよ。アルゼンチン代表の準備とは、似ても似つきませんね。

 敢えて、私が考えるコロンビア戦のスタメンをお話ししましょう。GKは川島永嗣、DFは左が長友佑都、CBに吉田麻也と森重真人、右が酒井宏樹。MFはボランチに本田圭佑と長谷部誠、左に乾貴士、右に原口元気、トップ下に香川真司。1トップが大迫勇也。

 もう一つのパターンはボランチを長谷部ではなく山口蛍にして、トップ下には香川を置かずに、大迫勇也と岡崎慎司の2トップです。私だったら、その布陣で開幕まで準備しますね。

 控えとしては、東口順昭、中村航輔、内田篤人、酒井高徳、槙野智章、清武弘嗣、武藤嘉紀、杉本健勇、小林悠、そして、柿谷曜一朗にチャンスを与えたいです。また、李忠成も戦える選手だから呼びたいですね。 

 今、新しい選手を呼び、テストしているっていうのは本当に遅い。こんなことでは間に合わないですよ。

 ワールドカップで対戦する相手は強いです。今の状態では予選リーグ突破は難しいでしょう。大舞台には経験のある選手が絶対に必要です。本田、岡崎、香川は外せません。

 ハリル監督は練習の前後に代表選手一人一人の目を見ながら挨拶して、握手しているそうですね。それは本当に素晴らしい行為です。でも、彼と選手の間には溝が出来ているという話が漏れ伝わって来ます。

 監督は、選手を自信満々の状態にしてロッカールームからピッチに送り出さねばならない。それがハリルには欠けているように感じられますね。

 自慢ではないのですが、ロシアワールドカップにはアルゼンチン人の監督が5名出場する予定です。母国アルゼンチンを背負うホルヘ・サンパオリ、コロンビア監督のホセ・ぺケルマン、ペルー監督のリカルド・ガレカ、エジプト監督のエクトル・クーペル、サウジアラビア監督のエドガルド・バウサ。

 彼らに共通しているのは、雰囲気作りが抜群に上手い点です。選手に自信を付けさせることに長けています。アルゼンチンでS級ライセンスを取得する際、心理学も学ぶんですよ。そういう勉強をしたうえで、それぞれの選手の心に響く言葉を掛けます。

 ハリル監督の指導を直接見た訳ではありませんが、色々と耳にする情報から察するに、雰囲気作りに難があるように思います。だから、「戦える選手」が見られない。

 闘莉王や戸田和幸のような気持ちを前面に出してファイトする選手がいなければ、ワールドカップでは勝ち上がれません。現代表チームは全体的におとなしいですね。私は日本代表がベスト8や16に入ることを祈っていますが、今のままだと、かなり難しいと言わざるを得ない。 

 残りの3カ月を有効に使ってほしいと切に願います。

 

 

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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