Yahoo!ニュース

元バスケ男子日本代表監督の提言「俺が考える具体的な強化策」

林壮一ノンフィクションライター
とにかく勝てないバスケットボール男子日本代表(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 FIBAワールドカップアジア地区一次予選で、現在、男子日本代表チームは0勝4敗のビリ。6月29日にホームでのオーストラリア戦、7月2日はアウェイでの台湾戦を残しているが、その弱さは際立っている。

 「何とも情けない」と溜め息をつくのは、本稿でお馴染みの吉田正彦氏。1964年の東京五輪には選手として、1974年のミュンヘン五輪、1976年のモントリオール五輪では監督として全日本男子を指揮した。実は吉田氏が日本代表を外れてから、オールジャパンは国際舞台に出られなくなっている。

 そこで今回は、全日本の強化策について訊ねた。

写真:著者
写真:著者

===================================================================

 2月22日の台湾戦、同25日のフィリピン戦における日本の攻撃は、スクリーンプレーでエントリーしての3ポイントが多かったでしょう。それは、ゴールから遠いところでプレーしている証左です。日本代表でありながら、ゴール下まで切れ込んでいく勇気も技術も持ち合わせない選手ばかりなのです。だから、3ポイントシュートだけになっていく。

 

 台湾戦もフィリピン戦も、4Qで日本のファールはゼロでした。フィリピン戦の4Qでは、相手のオフェンスリバウンドが19なのに対し、日本は僅か5。フィリピン戦のオフェンスリバウンド総数は、フィリピンが25、日本は14です。

 つまりそれは、「体を張って戦っている選手がいない」ということです。ご存知のように、バスケ選手は、4回までならファールしていいんです。体をぶつけ合って痛い思いをするから、自分もそのやり方を覚えていくんですね。

 

 日本選手たちのディフェンスは、相手選手との距離が離れ過ぎです。ボクシングで言えば、パンチがまったく届かない距離にいるようなものです。ボディコンタクトの無い防御なんですよ。だから、まったくディフェンスになっていません。

 それから、見ていて非常に気になったのは、ディフェンスの際、各選手の足が揃って、フラットになってしまっている点です。どちらかの足を前に出して構えなければ、動きようがないじゃないですか。いやしくも日本代表レベルの選手たちが、こんな初歩的なことすら身についていないのです。本当に目を覆いたくなりました。

 開催国ということをFIBAが考慮し、仮に2020年の東京五輪に出場させてくれたとしても、今のままでは「参加することにさえ意味のない弱さ」をひけらかすだけでしょう。でも、駄目だ駄目だと言っていても改善はされません。

 ですから私は、全日本の強化策について具体的に話そうと思います。まず、日本バスケットボール協会は、日本代表の15名をセレクトし、所属チームを辞めさせて、年収1千万で契約して代表の活動に専念させてほしい。そしてB1リーグの1チームとして、日本代表をリーグに加えるのです。あるいは、NBA Gリーグに全日本を参加させてもらう。

 15名を年間150日くらいかけて徹底的に鍛えることこそ、強化になります。現状の全日本合宿は、国際試合の1週間前に集まってちょろちょろっと練習するだけ。それは強化ではなく、コンディショニングにしかなっていません。どんな優秀な指導者でも、そんな短いスケジュールでチームを作り上げるのは不可能です。

全日本チームとして試合をこなしていくからこそ、ゲームコンディションと練習のコンディションが整い、チームとしての戦い方やコンビネーションプレーが進歩するのです。そんな風に環境を整備しない限り、いつまで経ってもアジアの弱小で終わるでしょう。

 今、Bリーグのシーズン中なのに、日の丸を背負った選手は全日本の試合にも出場しなければならない。だから各々の代表選手は疲弊していますよ。今ならまだ、ギリギリ間に合います。全日本は単独チームとして活動すべきなのです。それが“強化”なのです。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

林壮一の最近の記事