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アルゼンチン人コーチが語る「ブラジルが胸を貸してくれるというのに…」

林壮一ノンフィクションライター
日本代表はブラジル戦で何を学べるか(写真:ロイター/アフロ)

  アルゼンチン出身。兄は1979年ワールドユース東京大会でマラドーナと共に世界一となったピチ・エスクデロ。息子は現、京都サンガの背番号10、エスクデロ競飛王。自身はアルゼンチン、スペインでプロとしてキャリアを積み、アルゼンチンユース代表、ビーチサッカーアルゼンチン代表に選出された。

 引退後は、柏レイソル青梅、レッズ・ユース、埼玉栄高校、エルサルバドルのプロチームでの指導者を経て、現在はFC Futureで指揮を執るセルヒオ・エスクデロが、ブラジルに挑む日本代表について語った。

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 今回の日本代表の顔ぶれを見て、僕が感じるのは、選ばれなかった3名のことですね。   

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 このところ、本田圭佑、岡崎慎司、香川真司は所属チームで得点したり、アシストしたり結果を出しているじゃないですか。彼らがクラブでベンチを温めていた時は代表に呼んで、しかも先発で起用していたのに、ここに来て外すというのが理解できません。

 浦和レッズの長澤和輝くんですか? 彼は一体リーグ戦に何試合出場して、何点決めた選手ですか? ハリル監督が「見てみたい」と思ったのかもしれないけれど、ワールドカップまで時間が無いんです。テストはもういらないですよ。先月の強化試合の時も言いましたが、今の日本代表に選手をテストしている余裕など無い筈です。

 せっかくブラジル代表が日本と戦ってくれるんですよ。何故、この機会をもっと有効に使おうとしないのか? 僕は不思議でしょうがないです。主力メンバーで戦って、自分たちの課題をきちんと浮き彫りにすることが準備でしょう。今回のメンバーでは、いい準備にならないんじゃないですか。

僕は最終的には、本田、岡崎、香川はワールドカップのメンバーにはいるべきだと考えています。個人的に入ってほしいです。本田の経験は非常に貴重です。あのメンタルの強さは、日本代表にとって大きな武器です。アルゼンチン代表で言えば、ハビエル・マスチェラーノのような存在ですよ。チームの精神的柱です。PKになってもビビらないで決められる選手でしょう。ギリギリの戦いのなかでは、ああいう選手が欠かせないんです。長澤が国際試合でPKを決められるんですか?

 岡崎もプレミアリーグでゴールを重ねている選手です。確かに興梠慎三もいい選手ですよ。でも、Jリーグの得点王と、プレミアリーグで得点を取っている選手では比較になりません。レベルが違いますから。プレミアはレベルが高いですからね。香川も精神力が弱い、体も弱いと叩かれていますが、プレミアでハットトリックをしている選手です。つまり、プレッシャーのかかる試合を何度も経験しています。そういう大舞台に慣れた選手が、ワールドカップを戦う時は必要なんですね。絶対に。スタメンで難しいとしても、彼らは戦力になります。

 若い選手だけでワールドカップは勝てません。ベテランと若手のバランスがあって初めて、上まで進むことができるのです。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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