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アルゼンチン人コーチが語る「日本代表に必要なもの」

林壮一ノンフィクションライター
京都の背番号10・エスクデロ競飛王の実父であるセルヒオ・エスクデロ

 アルゼンチン出身。兄は1979年ワールドユース東京大会でマラドーナと共に世界一となったピチ・エスクデロ。息子は現、京都サンガの背番号10、エスクデロ競飛王。自身はアルゼンチン、スペインでプロとしてキャリアを積み、選手としての晩年は浦和レッズに所属。

 引退後は、柏レイソル青梅、レッズ・ユース、埼玉栄高校、エルサルバドルのプロチームでの指導者を経て、現在はFC Futureで指揮を執るセルヒオ・エスクデロをインタビューした。

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 今の時期に“選手を試す”“テストする”のでは遅いと僕は思います。ニュージーランドはワールドカップに出場する可能性があります。大柄な選手が揃っていてプレミアリーグでプレーしている選手もいましたね。ハイチもFIFA48位ですし、11カ国から集まった選手たちでしたが、身体能力が高く面白い選手が沢山いました。

 ただ、日本の戦い方に問題がありましたよ。ワールドカップを8ヵ月後に控えているのですから、主力をきちんと呼んで、1軍がどこまでの戦いをするかを見なければ強化にならないです。本大会に臨む「格となる」メンバーで戦わなければいけなかった。ハイチ戦は、高いチケットを購入したサポーターに失礼な試合でした。

左サイドの攻撃なら、前半は乾、後半は原口で競わせる。MFには本田と香川、どちらが有効か、どちらが結果を出せるのを見定める。ワールドカップ本戦を8ヵ月後に控えた今は、そういうことをやる時期です。若い選手を使って、焦りが見えたら原口を投入するなんていうのは、余裕のあるチームがやることですよ。

 アジア予選を突破したとはいえ、「若い選手にチャンスを与える」とか「選手をテストする」ような余裕は日本代表に無い筈ですよ。

 ワールドカップ出場が決まって、安心してしまっています。来月、日本代表はヨーロッパに遠征してブラジルとベルギーと練習試合をやるんですよね。今回の2試合もベストメンバーでそういう強い相手とやれば、もっと強化できたでしょう。

 世界トップの国を呼んでくるのが難しいなら、お隣の韓国と練習試合をやればいいじゃないですか。ライバル同士ですからお互い闘争心を剥き出しにして<勝負>になるでしょう。何が通じて、何が通じないかも分かると思います

 アルゼンチンでは、国内組を集めた2~3日の合宿を、毎月のようにやっています。言ってみればB代表です。そのB代表と国内のクラブが練習試合をやって、いい結果を出した選手はヨーロッパ組が帰って来た折に、彼らと共にA代表に選出されるんです。日本代表も、もっとB代表を充実させて取り組んでいく必要がありますよ。サッカー協会もハリル監督も、強豪国からもっともっと学ばないといけませんね。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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