Yahoo!ニュース

200年に一度の天才ボクサーが語る、内山高志の引退

林壮一ノンフィクションライター
次の人生でも彼らしく戦ってほしい。内山高志!(写真:中西祐介/アフロスポーツ)

 内山高志の引退発表の直後、本稿でお馴染みの元WBA1位(日本ウエルター&ジュニアウエルター王者)、亀田昭雄は語った。

 「ジェスレル・コラレス(パナマ)との第2戦は充分勝機がありました。僕としては、もう一回やらせてあげたかったですね…。年齢などは考えず、内山の技術があれば、リベンジできたんじゃないかと思います。

 まぁ冷静に考えれば、同じカードの3連戦というのはプロボクシングでは難しいですがね。カードとしての新鮮味はないし、チャンピオンは既にリターンマッチと言うチャンスを与えた訳ですから。ただ、もし第3戦が組まれれば、コラレスは自信を持ってリングに上がるし、内山も“負けていない”という気持ちがあるから、意地のぶつかり合いになって面白いファイトになるだろうと、期待していました。

 繰り返しになりますが、個人的には内山にもう一度やらせてやりたかったです。

 ボクサーは、一番いい時期、ノッている時期に世界に挑めるかどうかで、その後のリング生命が変わってきます。そういう意味で内山は、成長過程で世界王座に就き、ベルトを巻いた後、グングン伸びましたね。一試合一試合、精神も技術も逞しくなりました。ボクシングって、気持ちの部分が大きいです。内山は試合ごとに、パフォーマンスも表情も世界チャンピオンらしくなっていきました。日本人の世界チャンピオンのなかでは、一流ですよ。

 王座を失った試合は慢心が出ましたけれどね…。11度も世界タイトルを防衛すれば、どうしても“相手を迎え撃つボクシング”になります。挑戦ではなく、相手の出方を伺うようなスタイルです。コラレスには、そこを突かれました。

 ボクサーって、多くが引退後に苦しみます。ボクシングにかけていた情熱が、なかなか他に向かないですからね。先日も元ボクサーが犯罪者になったニュースが流れたでしょう…。ああいうのがいると、ボクシング自体に傷が付きます。

 でも、内山は真面目な男ですし、スポーツキャスター等に向いているように見えます。今までのキャリアを活かせるんじゃないかな。後輩の面倒見もいい選手だったし、彼がそういう仕事に就けば、ボクシング界のイメージアップにもなりますよ。第二の人生でも、成功した姿を見せてほしいですね」

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

林壮一の最近の記事