Yahoo!ニュース

フロイド・メイウェザー・ジュニアの「カムバック」

林壮一ノンフィクションライター
次のリングはボクシングルールだが、カムバックと呼べるのか?(写真:ロイター/アフロ)

8月26日、フロイド・メイウェザー・ジュニアがリングに上がる。相手はUFCのスターであるコナー・マクレガー。マクレガーにボクシングの経験はないが、12ラウンドのファイトが予定されている。

ボクシング界からは「単なるエキジビジョンだろう。それ以上のものではない」という冷ややかな声が聞こえてくる。

先日、メイウェザーが練習を公開した。

ラスベガス在住の記者仲間によると、メイウェザーは、かなり真剣に体を作っているようだ。

メイウェザーがアンドレ・ベルトを判定で下したラストマッチは2015年の9月12日。今年40歳を迎えた彼の2年ぶりの”ファイト”として、マクレガーは無難な相手と言えるだろう。

メイウェザーはシュガーレイ・レナードと比較されることが多かったが、レナードのような哀しく、無残なカムバックとならないように考慮した相手だ。それでいてPPVが売れるようにもっていく、したたかさもある。

40歳でリングに復帰したレナードは、ヘクター・カマチョに滅多打ちにされた。見る影もなかった…。

UFCサイドは「PPV収益の記録を塗り替えるだろう」と豪語するが、言い得て妙である。

メイウェザーは天賦の才に恵まれていたが、客を呼べた試合というのはそれほど多くない。パウンド・フォー・パウンド最強と謳われながらも、あまりの集客力の無さに、メインイベンターの座を奪われたこともある。2002年12月7日、ホセ・ルイス・カスティーリョとのリターンマッチはセミファイナルであった。この日のアリーナの入りは6割程度。3-0の判定勝ちを収めながらも、メイウェザーはブーイングを浴びた。

デラホーヤ、パッキャオ戦にも勝利したが、彼の凄みを見せつけたのは、初めてタイトルを獲得した1998年10月3日のジェナロ・ヘルナンデス、そして2001年1月20日のチコ・コラレスだった。

8月ファイトは「引退した男が興したビジネス」として見るには、面白いかもしれない。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

林壮一の最近の記事