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アルゼンチン人コーチが語る今日の日本代表

林壮一ノンフィクションライター
京都の10番・競飛王は、父の支えもあり、プロとして活躍中(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

エルサルバドルのプロリーグには、BIGクラブがFAS、アリャンサ、アギラと3つあって、僕はそのうちの一つ、FASと契約していました。一番稼ぐ選手でも、月収50~60万円ですけれどね。

兄、ピチ(1979年ワールドユース東京大会、アルゼンチン代表の優勝メンバー:右ウイング)が監督で、僕はアシスタントコーチでした。エルサルバドル人の技術は高いですよ。スピードもある。アルゼンチンほどではないにしろ、テクニックは日本と互角です。ただし、指導者のレベルは低いですね。1982年のスペインワールドカップに出場しているんですよ。

基本的に守備の意識が高く、もう少し、攻撃の意識を高めないといけません。FIFAのランキングも156位だったのが、120番台になってきました。

3~4年前、収賄問題があって、ファンもプロリーグを見に行かなくなっていました。今、サッカー界が改善されてきたところです。サッカーに対する情熱はある国です。選手たちは上手いけれど、国がサッカーに対して遅れています。グラウンドはボコボコのところもあるし、プロであっても自分のチームでグラウンドを持っているところが少ないんですね。ほとんど無い。市民の競技場を借りてやっているような状態でした。また、トップチーム以外は練習後にシャワーを浴びて帰すことができない。下の子には、何もないんですよ。

ハングリーさを持っている子もいるけれど、もっとアルゼンチン選手のように、目標を持たなきゃいけない。エルサルバドル・リーグでプレーするだけじゃなく、ワールドカップにに出てやるぞ とか。アメリカやメキシコ、ヨーロッパで活躍してやる! とかね。物価が安いから、エルサルバドル・リーグでやっていれば食っていける。ああ、それで幸せ、じゃなくて、大きな目標を立てないといけない。

色々味わいましたが、2016-2017シーズンにコーチとしてエルサルバドルで過ごしたことは、僕にとって素晴らしい経験でした

昨年末、クラブワールドカップをエルサルバドルでTV観戦しましたが、鹿島アントラーズは良かったですね。脱帽するほどの集中力でした。日本チームはやれば出来るんですよ。

日本代表、ハリル監督やスタッフも、あっちこっち回って、頑張っている選手をセレクトしていますね。闘ってる若い選手を起用している点がいいです。原口、大迫、久保、山口とかね。

課題はフィニッシュとセンターバックでしょう

吉田と森重、悪くは無いけれど、もっといいCBがいます。鹿島の昌子とか。日本はジュニアユース、ユースと下からの育成をきちんとやっている点が武器です。

ハリルは大分、日本のことを理解してきたし、名前のある日本人しか使わないということもなくなってきました。若手がレギュラーを奪いにいって、効果的な競争が出来ていると思います。アジア最終予選は残っていますが、今の状況なら、当然、W杯に出られると思います。

W杯の本戦も、組み合わせ次第では予選突破できるんじゃないかと。長友はプロフェッショナルだし、ほとんど怪我が無いし、試合は出ていないけれど高いレベルでずっと練習をやっていて、インテルでキャプテンも務めたし、左SBのスタメンでしょう。本田は経験があるけれど、先発ではもう厳しい。選手生活はまだ続けるでしょうから、名古屋をJ1に上げてやればいいのに。日本戻ることは悪い選択じゃないですよ。

岡崎は頑張っていたけれど、最近はあまり出ていませんね。でもイングランドで優勝したんだから、大したものです。上手くは無いけれど、動きとヘディングの強さで、素晴らしいサブになるんじゃないかと。負けているときとか、点を取るための交代カードですね。

本田と岡崎はいい控えになるでしょう。清武も香川よりいいですよ。あと、乾を呼んでほしいですね。左サイドからの崩しは、かなりのものがあります。

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僕は今、昔の教え子である千島徹がやっているサッカースクールで、アルゼンチンスタイルのサッカーを教えています。日本の子供たちに、楽しいサッカーを、試合のイメージを持ちながらやってほしいです。

いつの日か、プロの監督をやってみたいという夢を持っています。J3でもJFLでも、指導をしてみたいという夢。大事に持っていますね。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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