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ボクシング界にPPVの目玉がいない現実

林壮一ノンフィクションライター
コットもマルケスもPACMAN戦が話題となったが…(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

世界ヘビー級のビッグマッチは、11月に数多く行われた記憶がある。その反面、夏が終わりを告げる9月は、中量級が華やかだった。あのオスカー・デラホーヤは、9月にPPVの目玉となっていた。

95年には、ジェナロ・“チカニート”・ヘルナンデス、97年にはヘクター・”マッチョ”・カマチョ、98年にはフリオ・セサール・チャベスとの2戦目、99年にはフェリックス・トリニダードとの統一ウエルター級戦、02年にはメキシカン・アメリカンの後輩であるフェルナンド・バルガス戦、03年にはシェーン・モズリーとの第2戦をこなし、04年にはバーナード・ホプキンスと対峙した。

9月のラスベガスは暑かった。イベントもまたヒートアップしていた。

HBOのPPVで、今年の9月に予定されつつあるのは、ミゲール・コットvsファン・マニュエル・マルケス戦だという。フロイド・メイウェザー・ジュニアとPACMANの試合は「実現が5年遅かった」と評されたが、このカードにも新鮮味は無い。

現在43歳のマルケスは、試合時にもう一つ歳を食っているし、かつてハードパンチャーとして恐れられたコットにも、全盛期の輝きは無い。コットの場合は、アントニオ・マルガリート戦での初黒星(08年7月)、そしてPACMANにTKO負けを喫した(09年11月)ファイトで深いダメージを負ったように見える。

それでも彼らが現役でいられるのは、若手の台頭が見られないからだ。

熱かった9月のPPVを思い出すと、ボクシング界の低迷を感じざるを得ない…。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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