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『ロッキー』の続編

林壮一ノンフィクションライター
あの階段の上から見渡すフィラデルフィアの街並み

11月25日、全米で映画『CREED』が公開された。当初は『Rocky』のスピンオフと伝えられたが、実際は続編と呼んでいいだろう。ロッキーの宿命のライバル、アポロ・クリードの息子がボクサーとなり、老いたロッキー・バルボアに指導を依頼するというストーリーだ。

監督のライアン・クーグラーとは、彼が昨年来日した際に会った。処女作である『フルートベール駅で』の舞台挨拶終了後に会話する時間を持てた。

「次の作品を撮るために、今ジムに通っているんだ。アンドレ・ワード(※現WBAスーパーミドル級王者)が練習しているジムなんだよ」と語っていた。その場所は、私自身が若き日に汗を流した場所でもあった。

「とにかく良い作品を創るから、期待してよ」なるクーグラー監督の言葉を耳に、別れた。

思えば『ロッキー3』が日本で上映されたのは、私が中2の時。『ロッキー4』が高校3年。『ロッキー5』が大学時代。『ロッキー・ザ・ファイナル』では、記者として撮影現場を取材に行った。そして今回…。

フィラデルフィアの街並みが懐かしかった。ロッキーの銅像も、あの階段も…。私が10年を費やして書き上げたボクシングノンフィクションを制作していた頃は、元世界チャンピオンと共に、あの階段を上った。

今作品は、ファンにはたまらない、涙ものの内容だ。

ただ、クーグラー監督は黒人である。だからこそ、黒人ならではの視点で、黒人王者の哀しみを前面に出した作品でも良かったのでは、と感じる。

元世界ヘビー級チャンプがロッキーの銅像を見ながら、「いいよな、物語は気楽で。チャンピオンの本当の苦しさなんて分かっちゃいない。世界チャンピオンと言っても、俺は奴隷に過ぎなかったんだ」という言葉は、10年以上が経過した今でも、耳に残っている。

※ 私、近くトークショーを行います。そんな話もお聞きになりたい方、是非、いらして下さい!

https://www.shosen.co.jp/event/24914/

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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