Yahoo!ニュース

メッシはマラドーナを越えられない

林壮一ノンフィクションライター
間もなく、3つ目の星が入る!

オランダに辛勝し、24年ぶりにファイナルに駒を進めたアルゼンチン。ファンの一人として、素直に喜んでいる。是非、優勝してほしい! 

ただ……。

「メッシ」、「メッシ」と彼のチームだと語られているが、準決勝で最も目を引いた選手は、背番号14のハビエル・マスチェラーノだ。オランダ戦のみならず、いつも献身的な動きで相手の攻撃をことごとく摘み取っている(背番号4のパブロ・サバレタも良い)。

決勝トーナメントでのアルゼンチンは、攻撃よりも守備が光っている。

セルシオ・エスクデロ曰く「疲れもあったと思うよ。すばらしい勝利に間違いない。ドイツのパスサッカーはアルゼンチンのディフェンス陣には通用しない。決勝は、90分で決着がつくだろう。2−1でアルゼンチンの勝ちだね」

多くのメディアが「メッシはマラドーナを越える」と記しているが、どうだろう? マラドーナはあんなに歩いていなかった。ボールを奪われたら、死にもの狂いで取り返しにいった。チームのために常に走っていた。そんなキャプテンの姿に、チームメイトはピッチ上で闘志を更にかき立てられたのではないか。

2連覇を狙った90年イタリア大会で、幾度も削られながら立ち上がったマラドーナの足首は、ソフトボールのように腫れ上がっていたそうだ。果たして、メッシにそういう戦いが出来るだろうか??? 現段階のアルゼンチン代表の中心選手はマスチュラーノであって、メッシではない。

ボクシングの世界に「パウンド・フォー・パウンド」という言葉がある。もし、すべての階級のチャンピオンが同じ条件で拳を交えたら、誰が最強か、という理論だ。

これをアルゼンチンの10番に当て嵌めてみると、私のなかではマラドーナに軍配が上がる。

白と水色のアルゼンチン代表ユニフォームに魅せられたサッカーファンは世界中にいる。だから、いつも、かつてのスターと現役選手を比べてしまう。イグアインは、バティストゥータに到底及ばない。デマリアも、カニージャやベルトーニのレベルではない。でも、マスチェラーノは過去の代表のなかでもトップクラスのボランチだ。

「それは確かだね。今のアルゼンチン代表は、ピッチの中にも監督がいる状態。それが背番号14よ。86年はマラドーナのチームだった。他の選手はイマイチで、いいサッカーしていなかった。今回の代表チームの方がバランスがいい。メッシだけじゃなく、他もレベルが高いよ」(エスクデロ)

90年のファイナル前、マラドーナは言った。

「勝つために自分のすべてを出し尽くす。これが私にとって、最後のワールドカップになるかもしれないから」。

彼もこの時、3度目のワールドカップに挑んでいた。

メッシもあのくらいのハートをピッチで見せてくれよ。

マスチュラーノの闘魂こそ、アルゼンチンを象徴している。メッシには決して無いものであるように映る。

「アルゼンチンスタイルのサッカー、日本で教えます! 小学生時代から闘うハートを身につけなきゃダメ。是非、私の教室に来てください!!」 エスクデロ・サッカースクールの連絡先は asai@rokufc.jp です。

※ 僕の「イタリアサッカー取材日記」もついに最終回です。

http://otonano-shumatsu.com/column_list/36557.html 

是非、クリックしてみてください

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

林壮一の最近の記事