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YouTubeに魂を売った宮迫…TVタレントが絶対やらない「整形公開動画」に見えた覚悟

谷田彰吾放送作家
YouTubeより

 あの男が沈黙を破った。

”元”雨上がり決死隊の宮迫博之だ。

 ここのところ、宮迫の一挙手一投足が話題になっている。芸能人のYouTube大量参戦で浮き彫りになったメディア大変革期ならではのニュースだろう。芸能人YouTuberの代表格でもある宮迫。その動画を分析すると、テレビタレントなら絶対にやらないであろう企画が見受けられる。闇営業問題以来「いつかテレビに復帰したい」と語ってきた宮迫だが、実際は「YouTubeに魂を売った」と言っても過言ではない。それだけYouTubeに人生を賭ける”覚悟”を感じる。

 『アメトーーク特別編』で雨上がり決死隊の解散を報告した直後、宮迫はYouTube活動の休止を発表した。蛍原が解散のきっかけを「宮迫さんがYouTubeを始めたあたりから」と発言。宮迫と同じく闇営業問題で謹慎したロンドンブーツ1号2号の田村亮が復帰ライブと会見を行う前日に、宮迫がYouTubeをスタートしたことを許すことができなかったという。宮迫は、YouTuberとコラボしていたため、公開日をその日にするしかなかったと言い訳したが、番組を見た視聴者から宮迫のもとに批判が殺到した。

 それだけではない。かつてテレビで宮迫とともに番組を作り上げてきた芸人たちからも、厳しいコメントが並んだ。

 「いやいや、お笑い芸人ロンブーといろんな芸人が何十年、一緒にやってきてると思うねんと。言葉悪いかもしれないけどその芸人より昨日、今日会ったYouTuberの方を取るんかい、みたいな所は多くの芸人が思った部分はあった。やっぱり『俺が浅はかなことしたな』という根っからの謝罪が今回もなかったなと。そこはやっぱり蛍原さんはちょっと許せない」(千原ジュニア)

 「(解散報告会を)おもしろおかしくしようとしてたのは感じました。でも、ゲストの人たちとか蛍ちゃんとかと温度差は感じました。求めているものはそこじゃなくて、ほんまの宮迫の言葉を聞きたかった」(今田耕司)

 「宮迫はもともとそうやったのか、途中で何かきっかけがあってそうなったのか、(コンビニ対する)価値観が、優先順位が違ってきたんやろな。ホトちゃんのほうをやっぱ見ていないなっていうのは。アクリル板以上の分厚い壁を感じましたね」(松本人志)

 かつての仲間たちからの言葉が心に突き刺さったのか…。事態を重く見た宮迫は、急遽YouTube活動の休止を決めたというわけだ。

 だが、それから約1週間後、宮迫はYouTube再開を動画で報告した。それを受けて、またしても賛否両論。「たったの1週間かよ!」という否定派、「待ってたよ!」というファンのコメントが入り乱れた。

 動画で宮迫はこう語った。

 「やっぱり、僕ができるのはYouTubeという場所しかないので、そこでみんなを元気づけられたり笑顔にできるようなことをやっていきますので、そこを期待していただきたいなと思います」

 その表情は吹っ切れたように見えた。ABEMA TVでの特別編ではあったが『アメトーーク』に復帰し、雨上がり決死隊を解散したことで、本人の中で何かが変わったのだろう。「テレビに復帰したい」と言い続けてきた宮迫だが、それが叶わないことを受け入れたのではないか。「自分にはYouTubeしかない」 居場所が決まれば、やることをやるだけだ。

 「もっと反省しろ」という意見もあるだろう。私は宮迫と仕事をしたこともないし、ファンでもないが、彼の決断は妥当だと思う。そもそもYouTubeを始めたことに否定的な意見も根強くあるが、宮迫の立場からすればやって当然だ。理由はどうあれ、もしもあなたが今の職場を解雇されたらどうするだろうか?看護師さんならまずは新しい病院を探すだろうし、SEなら別のシステム会社を探すだろう。宮迫も同じだ。自業自得とはいえ、長年勤めてきたテレビという職場を失った。自分にはお笑いという芸しかない。ならばYouTubeに活路を見出すのは当たり前だ。家族もいる。もちろん開始する時期や筋を通していなかったことは良くなかった。だが、転職そのものは非難されるものではない。

 1週間で復帰したことについても、そんなに非難されることではないと感じる。YouTubeはテレビとは違う。YouTubeはユーザーが見たい動画を自分の責任で選択し、楽しむメディアだ。極端に言えば、YouTubeはファンサービスだ。自分を応援してくれるファンを楽しませるのが最優先。テレビのように「老若男女たくさんの人を楽しませる」わけではない。宮迫が嫌いな人は見なければいい。わざわざ動画を再生し、悪意のあるコメントを残す。それは例えるなら、営業を再開した飲食店の壁に悪意のある言葉を落書きするようなものだ。どちらが卑劣か、価値観は人それぞれだろうが、宮迫にも生活がある。彼の職場は「YouTube」なのだ。

 その覚悟を感じた動画がある。6月27日に公開された『【閲覧注意】顔が大変なことになってしまいました…』。宮迫がずっと気にしていた目の下のクマを整形手術で取ってしまおうという企画だ。カウンセリングから手術の様子、顔のビフォーアフターまで、全て見せている。サムネイルには、目が大きく腫れ上がった手術直後の宮迫の顔。その後も整形の予後を報告する動画を出すなど、これでもかと「整形したこと」をあおっている。

 これはテレビタレント時代の宮迫には絶対にできなかったことだ。整形手術はテレビタレントにとってタブーと言っても過言ではない。今も整形手術に嫌悪感を持つ人はたくさんいるため、人気商売のタレントは、仮に整形していても公表することはない。近年、少しずつ公表するタレントが現れたが、宮迫のようなゴールデン番組のMCクラスのタレントではまずありえない。それがこれまでの芸能界の常識だった。

 しかし、YouTuberの常識は真逆だ。再生数が命のYouTubeにおいて、「整形」は安定して高い再生数を叩き出すドル箱企画だ。だから多くのYouTuberが動画で一部始終を公開してきた。宮迫のように何度もこすればコスパも良い。つまり、 整形はYouTuberにとって”やって当たり前の企画”なのだ。

 宮迫の整形動画はおそらく、蛍原と解散について話をした4月以降に撮影されたものだろう。相方から解散を切り出され、テレビへの復帰がより困難になったことを悟ったのではないか。それを考えると、この整形動画の捉え方も変わってくる。私はこの動画に「俺はYouTubeで生きていくんだ」という覚悟を感じた。テレビや芸能界の常識ではなく、YouTubeの常識が俺の常識。「YouTubeに魂を売った」と言うとネガティブに聞こえるかもしれないが、本気でYouTubeと向き合っているのが良くわかる。

 あえて意地悪なことを言えば、今回の謝罪動画や再開報告動画でチャンネルへの注目度は上がった。今もバッシングにあっている宮迫だが、YouTubeのチャンネル登録者数は解散報告の時より約2万人増えた。ある意味、彼の狙い通りの展開になっているという見方もできる。それもまた、YouTubeでの戦い方なのだ。

 吉本興業の大崎会長は「週刊文春」の取材で宮迫についてこう語った。

 「(吉本に)戻ってくるなというか、戻ってこんでいいんじゃないかとフライデーさんに言った。それはYouTuberで十分食べていけているわけだし、生活に困っているわけではないし。たくさん稼いでいるみたいだから、もう吉本に戻らなくてもいいじゃん(笑)(頑張って欲しい?)それはないけどね。僕はもう別に関係ないし。」

 吉本との溝は依然深い。だが、吉本に残ってテレビを中心に活動することが100%正解という時代ではない。応援してくれるファンはいる。宮迫は宮迫の道を行けばいい。

 最後に、一度過ちを犯した人に対して、SNSやYouTubeで悪質なコメントを投稿する文化はなんとかならないものか。匿名なのをいいことに人を叩くのはフェアじゃない。「有名人だから」「たくさんお金を稼いでいるから」そんなことは理由にならない。テレビのワイドショーも煽りすぎているように思う。世の中が変化することを望む。

放送作家

テレビ番組の企画構成を経てYouTubeチャンネルのプロデュースを行う放送作家。現在はメタバース、DAO、NFT、AIなど先端テクノロジーを取り入れたコンテンツ制作も行っている。共著:『YouTube作家的思考』(扶桑社新書)

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