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テレ朝・ワイド!スクランブルが謝罪 「視聴者の質問募集」が”タブー演出”である理由

鎮目博道テレビプロデューサー・演出・ライター。
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

テレビ朝日「大下容子ワイド!スクランブル」が、視聴者から寄せられた質問を捏造していた。21日の放送で大下アナが謝罪した。

番組では視聴者から番組サイトやFAXで質問を募集していたが、実は番組のチーフディレクターが用意していた質問を、あたかも視聴者からの質問かのように偽って放送していたという。これまでに放送した質問のうち2割程度はチーフディレクターが考えた「質問」だったということで、情報番組としてこれは到底許されることではないのは言うまでもない。

30年前から全く変わらぬ状況

私も長年テレビ朝日で報道・情報番組を制作してきたが、今回このニュースを聞いて最初に思ったのは「ああ、まだそんなことをしているんだな」ということだ。

実は「視聴者からの質問」というのは、報道・情報系のテレビマンならだいたいの人は気づいている「やってはいけない演出」なのだ。なぜなら「期待したような質問はまずそんなに来ない」ので必ずと言ってよいほど自分たちの首を絞めるからである。

筆者は1992年にテレビ朝日に入社したが、実はその直後にとあるテレビマンから同じような話を聞いたことがある。どういう話かというと、「視聴者から寄せられた質問に答えるコーナーの担当をとあるニュース番組でやらされたことがあるが、ほとんど質問は来ないし、来たとしても放送で使えるような面白いものはほとんどないので、自分で毎日それっぽい質問を考えざるを得なくなり、とても苦しんだ」という体験談だった。そして、その先輩テレビマンは「視聴者募集に頼って番組を作ると絶対苦しむから、やめておいた方がいいよ」と忠告してくれた。

ほぼ30年前の話だが、今回のケースと全くと言ってよいほど重なるのだ。だから私は「まだそんなことをしているのか」と、今回のワイド!スクランブルの件を聞いてすぐに思ったわけだ。

「視聴者から募集」は制作者の首を締める

私自身「ご意見募集」ではないが、「視聴者投稿写真募集」などのコーナーでずいぶん苦しんだ。捏造するわけにはいかなかったから、写真好きの知り合いに片っ端からお願いして写真を投稿してもらったこともある。

たとえそれが「視聴者プレゼント」であっても、よほどの人気番組でもない限り、なかなか応募は来ないのが通常だ。

「テレビをボーッと見るのは良いが、テレビに積極的に参加したい視聴者などほとんどいない」というのが、残念ながら多分真理なのだと思う。だから「視聴者から質問を募集してそれに答える」などというコーナーは作らない方がきっと良いのだ。

なのにテレビマンは番組を「視聴者参加型」になぜかしたがる。「FAXでご意見募集」とかよくある演出だし、最近でも「Twitterの視聴者の声を番組の画面で紹介」とか、やたらと目にする。

そしてもっと言えば、銀座や渋谷など繁華街の街頭で行われる「街録」と呼ばれる街頭インタビューなども、古くから行われてきた「視聴者参加型」っぽい演出ではないか。

「視聴者参加型っぽい演出」を考え直すべきでは

残念ながらこうしたものは「真の視聴者参加型」ではない。あくまで「かなり制作側の意図に基づいた」言ってみれば「視聴者参加型に見せるための演出」にすぎない。そこで取り上げられる「視聴者の声」はあくまで「こういう質問があったらいいな」と制作者が思い、選択した意見にすぎない。

いまテレビは、特に報道・情報系の番組は、「嘘くさい」と視聴者に思われがちである。そもそもワイド!スクランブルがやったような捏造は論外だが、こうした「嘘くさい視聴者参加型」の演出を容易に使うこと自体を考え直した方が良いのではないか、とつくづく思う。

ワイド!スクランブルは、他の番組が取り上げないような海外のマニアックな話題を取り上げたり、「オンリーワンな内容」で頑張っているので筆者も大好きな番組だ。だからこそ、今回のような捏造はとても残念でならない。ぜひ再発防止を徹底し、演出のあり方をもう一度ちゃんと見直して、視聴者の信頼を取り戻して欲しいと思う。

テレビプロデューサー・演出・ライター。

92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教を取材した後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島やアメリカ同時多発テロなどを取材。またABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、テレビ・動画制作のみならず、多メディアで活動。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究。近著に『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)

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