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台湾人気俳優が見た東京・台北・北京 エンタメ業界の違い。日本エンタメの強さは…

鎮目博道テレビプロデューサー・演出・ライター。
曾少宗(フィガロ・ツェン)

 台湾で人気俳優として地位を築きながらも、あえて東京や北京で新たな挑戦を開始した曾少宗(フィガロ・ツェン)。彼が感じた日本・中国大陸・台湾のエンタメ業界の違いとは。そして日本エンタメの強みとは。来日したフィガロ・ツェンさんに話を聞いた。

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Q:なぜ台湾で成功しているのに、東京と北京で活動しようと思ったのですか?

 私は台湾で十数年俳優としてやってきて、慣れた環境ではなくて違う場所で、違う素晴らしい俳優さんや、監督さんやスタッフさんたちと出会って、芝居に新しい刺激を受け、さらに成長したいなとずっと思っていました。それで、東京と北京での挑戦を去年始めました。

 東京や北京ではゼロからのスタートだったので、正直失ったことも多いです。

自分が育ってきた環境を離れるというのは、すごく勇気がいることでした。新しい環境にはいろんな刺激がもちろんあって、いい面もあるんですけれど、難しい部分もたくさんあるんですね。寂しい思いもたくさんしますし、人間関係をゼロから構築していかないといけないですし、まるで人生をもう一度やり直しているような感覚です。

 でも作品を残せた台北と東京と北京の3カ所で素晴らしいクリエイターの方々やスタッフの方々と実際に出会うことができていて、北京でもいくつか作品を残せましたし、日本でも皆さんと良いお仕事ができています。

 人生はとても短いですから、例えば50歳とか60歳で自分の人生が終わるとすると、あと残った時間で一体何ができるだろうかと考えているので、今の挑戦はすごく意味のあることだと思っています。

日本は「いつも100%全力」、中国大陸は「すごくクリエイティブ」

Q:日本と台湾の監督や俳優は、どういうところが違いますか?

 私はいろんなことを観察するのが大好きなので、俳優だけではなく、スタッフの方がどうなのかとか、いつもウロウロしながら見ています。マネージャーには「本番前には、もっとゆっくり座っていたほうがいい」とよく注意されるのですが、私はいろいろ見たいのです。

 日本の現場を見ていて一番感じたことは、日本の役者さんはいつでも100%の力で臨んでいるということです。例えばリハの時でも、常に100%の演技で臨んでくる。リハから100%を出すというのはすごくエネルギーが必要で、大変なことなんですよね。日本以外のところだと「70%くらいでいいんじゃないかな」っていう感じで臨んでいる人も見てきました。でも日本では、今まで見たところでは、ほぼ全員が100%出しているので、私もこういう姿勢でやっていかなければいけないと改めて思いました。

Q:北京の現場は、台北とはどう違いますか?

 中国は広大ですから、それぞれの場所で文化もすごく違うと思うのですが、北京で仕事をしている時に一番思うのは、やはりクリエイティブをとても重視しているな、ということです。みんなすごくクリエイティブなものが大好きですし、映像が大好きです。北京では、みんなが常にクリエイティブな雰囲気の中で作品を作っていく、という感じがあります。

 現場は常にみんなで「あの照明はどうだ」とか、「このキャラクターの性格はどうだ」とかいうことを、話し合いながら決めていくんですね。台本も決まったものではなくて、その場で付け加えたり、役柄も本当に自分たちで作り上げたものという感じがしました。それが北京の特徴で、面白いなと思います。

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台湾の俳優は「星座」や「占い」で役作りをする

Q:海外から来た俳優だからこその役割は?

 ひとつ挙げるとすると、いろんな交流をして、いろんな文化をお届けできることかなと思っています。よく日本の現場で皆さんから「台湾の俳優さんはどういうふうに役作りをしているんですか?」と聞かれるのですが、この話をすると「面白い!」と言ってもらえるエピソードがあります。

 実は台湾の俳優は、役作りをする時に星座を重視する人も多いです。なぜなら、台湾社会では人の性格や傾向を見る際に、星座を非常に参考にするからです。例えば、私は台本を見て、「この人は何座に違いない」と、台本に書いてないところを想像しながら肉付けして役作りをします。あとは例えば占いをもとに役作りをすることもあるのですが、そういうことを日本の監督とかプロデューサーさんにお話しした時に、「台湾の役者さんはそうなんだ」と、台湾の様々な事を理解していただけると嬉しいです。

日本エンタメの強さは「リアルなフェイク」を描く実力

Q:日本のエンターテインメントについてどう思われますか?今日本のエンターテインメント界では、自信をなくしたり、未来への希望を失っている部分も多いと思うのですが?

 私は外国人なので、日本の文化はすごく特徴があると思います。アニメとかもそうですし、ある種のクリエイティブは、日本でしか生まれないものだなと思うんです。

 例を挙げると、私が出演した「時効警察」のようなストーリーはあまり台湾では生まれにくいなと思っています。日本はリアルじゃない世界のお話、フェイクのお話を実際にありそうにリアルに描くのがとても上手いなと思いますね。

 こういう日本にしか作れない素晴らしいものがあると、日本に来てみて改めて思います。日本のエンターテインメントはあまり元気がないとか未来がないとか聞くこともあるんですけど、なぜそう考えるのかがあまりわからないところがありますね。自分にとってはすごく日本の映像業界はとても輝いて見えています。

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中華系は「とても自由」。あまり考えすぎずに付き合って!

Q:日本人はまだ中華系の人の文化をよく理解できなくて、誤解してしまったり怖がってしまったりすることも多いですが、それについてはどう思われますか?

 日本の人にアドバイスするとしたら、そんなに考えすぎなくていいんじゃないかということだと思います。なぜかというと中華系の人はだいたい自由で、そんなにいろいろなことを細かく考えてないと思います。だから日本の人が気にして、マナーとかこうしなきゃいけないとかあまり考えすぎると逆にちょっと距離感を感じで少し「あれっ?」て思うので、そんなに考えすぎないで付き合ってくださいっていうことですね(笑)

いつか満島ひかりさんと共演したい

Q:今日本でこの人と仕事がしたいとか、この人の作品に出たいとかいう目標はありますか?

 とても多すぎて選べません。しかし、強いてお一人挙げるとすると、満島ひかりさんがとても大好きです。私の精神の支えのような人なので、是非是非いつの日かご一緒できる日が来たらいいなと思っています。

 満島さんは他人の評価よりも、ご自身がやりたいことをやるということをとても重視されているように思えるので、そういったところもとても尊敬しています。

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アジアの相互理解のために少しでも貢献したい

Q:最近はアジア全体で一つの作品が作れるような、良い時代になってきましたよね?

 実は最近よくそのことについて考えています。ちょうどNHK WORLD-JAPANで「KAWAII INTERNATIONAL」という番組のお仕事をさせていただいたところなのですが、その番組で一緒に司会をした方が、アメリカ育ちの台湾出まれで、スタッフの方の中にも、日本人もいたり、ハルピン出身の方がいたり、本当にいろんなバックグラウンドを持った人たちがいて、一緒に同じものを作るという現場だったんですね。

 そこですごく印象に残ったのは、人々の距離が本当に近くなっていることと、みんなが交流したいという気持ちも高まっているということでした。二日間とてもタイトなスケジュールで大変だったんですけれど、とても楽しかったです。

 自分が少しでも知名度がある、影響をわずかでも与えられる俳優になれているとするなら、文化交流や相互理解のために何ができるかなとよく考えたりしています。

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曾少宗(フィガロ・ツェン)

台湾版「花より男子」の『流星花園』から生まれた台湾アイドル「F4」の弟分ユニットとして、2002年に6人が選ばれ、【コミックボーイズ(可米小子)】としてデビュー。台湾、アジアで人気を集める。

2005年グループ解散後、俳優としてのキャリアをスタート。ドラマ、CMへ活動の舞台を移し活動中。

2007年に出演したドラマ「イタズラなKissII」が日本で放送され好評価を得、日本での広告に起用される。日本ファンミーティングを開催し、島根県、大分県の観光大使に選ばれる。

2018年より日本での活動を再スタート。

「孤独のグルメ Season8」、「サウナーマン」、「時効警察はじめました」にも出演。

台湾出演ドラマ「子供はあなたの所有物じゃない」「生死接線員」等。

NHK WORLD-JAPAN「Kawaii International 」12月6日から配信予定。

テレビプロデューサー・演出・ライター。

92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教を取材した後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島やアメリカ同時多発テロなどを取材。またABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、テレビ・動画制作のみならず、多メディアで活動。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究。近著に『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)

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