今回の衆院選における最重要政策は何か。筆者の独断と偏見で言わせてもらえば、それは温暖化対策である。なぜなら、温暖化対策は、地球環境のためだけではなく、正に今、日本の人々が求めている政策を包括的に含むものであり、かつ緊急性が高いものだからだ。

○温暖化対策は総合的な政策

 今、世界経済は「脱炭素」へと大きく舵を切っており、新たな産業革命と言うべき変化へと向かっている。経済や社会のあり方が変わる中で、温暖化対策は雇用・景気対策となり、低迷する日本経済を回復させるための施策となる。温暖化対策の専門家による「未来のためのエネルギー転換研究グループ」の試算によれば、2030年までに、エネルギー需要を約40%削減する省エネと、再生可能エネルギーで電力の44%をまかなうエネルギー転換を実施すれば、年間254万人の雇用が新たに創出されるという。投資額は、2030年までの累計で202兆円となり、GDPを205兆円押し上げ、石油や天然ガス、石炭などの化石燃料の輸入削減額は52兆円になるそうだ。

 異常気象などの温暖化による災害は、人々の命や生活を左右する問題であることは勿論のこと、温暖化が進行すれば、世界的な食料危機となることが危惧され、食物自給率の低い日本にとっては危うい状況となる。温暖化の進行による食料や水資源、土地の奪い合いは、今後の世界情勢を不安定化させるリスクであり、戦争の要因にすらなり得る。外交・安全保障という点から見ても、温暖化対策は極めて重要だ。最悪の場合、温暖化によって人類自体や地球の生態系自体が回復不能なダメージを被ることもあり得ることであり、破局的な温暖化の影響を未然に防ぐためには、あと10年以内に有効な対策を大規模に行う必要がある

 つまり、今回の衆院選は日本、そして場合によっては世界の今後の行く末に大きく影響するものだ。だからこそ、有権者も各党の温暖化対策をよく比較して、より良い選択を行う必要があるだろう。本稿では、環境NGO等が、各政党にアンケートを行ったり、公表されている政策をレビューしたりしているものを紹介し、読者皆さんの投票の判断材料としたい。

本稿の主な内容

・環境NGOや市民が各党の政策をレビュー

・2030年までの温室効果ガス削減目標

・石炭火力発電の廃止

・再生可能エネルギーの導入目標

・メガソーラー問題や再エネ接続拒否への対応

・温暖化対策は景気・雇用対策

・自動車の脱炭素化

・各党の政策総括

○環境NGOや市民が各党の政策をレビュー

温暖化対策についての各党の公約に対しては、環境NGOや複数の市民団体ネットワークがレビューやアンケートを行っている。筆者が参考にしたのは、以下のもの。

・WWFJapan "衆院選2021選挙公約比較(温暖化対策)"

・ATO4NEN "各政党の気候・エネルギー政策 衆院選「選挙公約」徹底比較"

・気候ネットワーク "各党選挙公約の気候変動エネルギー政策に関する分析"

・ヒューマンライツ・ナウ "人権政策に関する政党アンケート2021"

みんなの未来を選ぶためのチェックリスト衆議院選挙2021

各レビューはそれぞれ異なる視点や質問もあるため評価は必ずしも一致しないが、

・WWFJapanでは、れいわと共産党の評価が高く、立憲、社民が続く

・ATO4NENでは、社民の評価が高く、れいわと共産が続く

・気候ネットワークでは、共産と社民が評価が高く、れいわ、立憲が続く

・ヒューマンライツ・ナウは、アンケート結果を元に共産、社民、れいわを高く評価

・みんなの未来を選ぶためのチェックリストは、評価ではなく各党からの回答を公開

というものとなった。その他、温暖化対策を求める若者達の団体「Fridays For Future Japan」も各党の代表者を交えた討論会を行っている。

○2030年までの温室効果ガス削減目標

 環境NGOをや市民団体による各政党の政策の評価するポイントや質問を分析すると、やはり、2030年までに日本が排出する温室効果ガスをどれだけ削減するか、というものが重要視されている。破局的な温暖化による被害を未然に防ぐには、世界平均気温の上昇を2度以下、できれば1.5度程度に抑えることが必要だ。IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)が今年8月に発表した最新の報告書によれば、現状のままでは、早ければ2030年頃にも世界平均気温は1.5度上昇してしまう。つまり、温暖化対策は時間とのたたかいなのだ。有効な対策としては、2030年までに世界全体の温室効果ガスの排出量を半減させる必要があるが、排出量の多い国々は、より積極的に排出削減を行わなくてはならない。温暖化に関する国際的な研究組織「クライメート・アクション・トラッカー」の分析によれば、日本は2030年までに2013年比で60%以上削減する必要があるという。日本は菅政権下で「2030年までに2013年比で46%削減し、50%の高みを目指す」との目標を示した。それまでの日本の目標に比べれば前進したものの、まだまだ十分な目標だとは言い難い。衆院選公約での各政党の目標を見ると、社民党の「60%削減」と共産党の「54~63%削減」が最も高い。立憲民主党も「55%以上」とある。自民党と公明党は、菅政権時の目標と変化はない。

○石炭火力発電の廃止

 温室効果ガス排出削減のため避けられないのが、大量のCO2を排出する石炭火力発電の廃止だ。高効率なものでも天然ガス火力発電に比べて2倍近いCO2を排出する石炭火力を廃止していくことは温暖化対策の中でも最優先課題とされる