「地球温暖化でいいこともある」「北海道の米が美味しくなったのは気温が上がったから」―麻生太郎自民党副総裁は、温暖化(=気候危機)を許容するかのような発言が批判を呼んでいる。温暖化による影響は既に深刻なものとなり、日本でも農作物が高温で品質・収量低下していることを農水省は報告。また、麻生氏の地元を含め、豪雨などの災害も頻発しているのだ。

○温暖化容認、生産者の努力をないがしろ

 問題の発言は、今月25日、北海道小樽市での街頭演説でのもの。麻生氏は「地球温暖化って悪い話しか書いてませんが、温暖化でいいことがあります」等と発言したのだ。

「北海道はあたたかくなった。平均気温が2度上がったおかげで、北海道のお米は美味しくなった」

「昔は北海道のお米は厄介道米(やっかいどうまい)という程、売れない米だった。今はその北海道がやたら美味い米をつくるようになった。農家のおかげですか?農協の力ですか?違います。温度が上がったからです」

「温暖化が悪い話じゃなくて、ここはいい方に向くものも、農産物に限らず、いろんなものが良くなりつつあるんじゃないの」

*共同通信配信の麻生氏演説動画より

 この発言に対し、北海道農民連盟は、今月26日付で声明を発表。「自民党の重要ポストにある副総裁の発言としては有るまじき由々しき事態」「地球温暖化防止対策に取組んでいる企業や国民にとっても耳を疑うような発言」と批判。さらに「全国でも北海道米が高い評価を得ているのは、全道挙げて米の品種改良を重ね、官・民・農が一体となって協力し、“北海道ブランド米”としての地位を確立した結果であり、今までの北海道米を作る生産者の努力と技術を蔑ろにするような発言は断じて許されない、強く抗議する」と憤りをあらわにした。

○温暖化による農業被害は既に深刻

 農林水産省の報告からも、麻生氏の発言が事実と異なることがわかる。同省の「地球温暖化影響調査レポート」(令和2年)によると、全国の稲作で、デンプンの蓄積が不十分な白未熟粒や虫害の多発等の品質低下・収量低下が高温によって引き起こされているのだという。米以外にも、茶、梨、柿、桃、梅などの果物、ほうれん草やキャベツ、レタスなどの野菜も、高温による品質・収量の低下が起きている。北海道では、夏の猛暑で乳牛が弱り、飼料となる牧草も枯れるなど、畜産業への影響も甚大だ。

○麻生氏の地元でも被害深刻

 「農産物に限らず、いろんなものが良くなりつつあるんじゃないの」という発言も、異常気象による災害に多くの人々が苦しめられている中、極めて不謹慎だ。IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)が今年8月に公表した最新報告書は、異常気象が頻発しているとして、既に温暖化の影響が極めて深刻なものであることを強調している。麻生氏の地元、福岡8区でも直方市や飯塚市などが、西日本豪雨(2018年)による河川の氾濫で家屋浸水被害が多数発生。その後も、福岡県では毎年のように豪雨に襲われ、今年8月も、農業や道路などに約218億円の被害が発生しているのだ。

○「暴言癖」で済ますな

 IPCCの報告によれば、破局的な温暖化による被害を未然に防ぐには、あと10年以内に世界全体の温室効果ガス排出を半減させるなど、国際社会の総力をあげた取り組みが必要とされる。脱炭素化は世界経済のあり方も変えていくもので、逆に言えば、これに乗り遅れるなら、日本の国際競争力は大幅に低下する。自民党の動向に強い影響力を持つ麻生氏の認識の危うさは、日本の今後の危うさでもある。「いつもの麻生氏の暴言癖」で済まされるものではないだろう。

(了)