名古屋入管に収容されていたスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が著しい健康状態の悪化にもかかわらず、適切な医療を受けられないまま、今年3月に死亡した問題で、法務省/出入国在留管理庁(入管庁)は今月10日に調査報告書をまとめた。さらに、同20日には、ウィシュマさん死亡を受けての入管庁の改革チームが設置されたという。だが、数ヶ月に及ぶ調査期間にもかかわらず、調査報告書はウィシュマさんの死因すら特定せず、他の調査内容にも不審な点が多い。だが、ウィシュマさんが亡くなるまでの経緯の中で、幾度も彼女の命を助けるチャンスがあった。本稿では、ウィシュマさん死亡事件をこの間取材し続けた筆者が、先日の記事に引き続き、法務省/入管の調査報告書について、検証を行う。

○仮放免に「飢餓・脱水状態」が反映されたか

 ウィシュマさんは、今年1月4日に仮放免を申請したが、同2月15日に不許可が決定され、同月16日に本人に通知された。既に述べたように、2月15日時点でウィシュマさんの健康悪化は著しく、尿検査で飢餓・脱水状態にあることは入管職員達にも伝わっていたはず。そのことが仮放免に判断に影響しなかったのかについては、報告書では触れられていない。また、仮放免不許可がウィシュマさんに通知される一方で、彼女自身が飢餓・脱水状態にあることが、正しく伝わったのか。医療法第1条の4第2項では、「医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない」とされている。いわゆるインフォームドコンセントがウィシュマさんに適切に行なわれていたか否かであるが、その後2月22日に提出した2回目の仮放免申請で、少なくとも調査報告書によれば、ウィシュマさんは2月15日の尿検査について触れていない。この検査結果が適切に本人に伝えられていたならば、仮放免を求める理由として、ウィシュマさんは仮放免許可申請書に書いたのではないか。

法務省/入管の調査報告書より。少なくとも、名古屋入管の看護師はウィシュマさんの状況の深刻さを理解し、入管職員に共有していた。
法務省/入管の調査報告書より。少なくとも、名古屋入管の看護師はウィシュマさんの状況の深刻さを理解し、入管職員に共有していた。

 法務省/入管の調査報告によると、2月下旬や同月末には、名古屋入管内では、ウィシュマさんの仮放免許可を検討すべきと警備管理官から次長に伝えられていたという。だが、ウィシュマさんの体調悪化は「ストレス等心因性のもの」と判断した非常勤の内科医の指示により、今年3月4日に外部病院で精神科の診療が決定していたこと等から、ただちに仮放免を許可するとの判断には至らなかったのだという。